未来の手紙
巴里マカロン
第1話
冬といえば、一般の人たちは雪やクリスマスなどを連想するだろう。しかし、そこに高校3年生という条件がつくと彼らの答えは冬季講習、大学受験最後の大詰めが大半になるだろう。と言ってる自分も大学受験に追われる高校3年生の1人で有名予備校の一週間の無料体験冬季講習に電車で向かっている最中である。今日は初日で遅れるわけにはいかないと早めに家を出たが時間ギリギリになってしまった。学生服がいない車内に焦りを感じながら、目的の駅を待った。
目的の駅に着き、人混みに流されながら改札を目指しているとIC定期を落としたことに気づいた。
「すいません、これ落としましたよ。」と後ろから声がするので、振り返るとそこには身長150cm弱で童顔の可愛らしい、学生服を着た女の子が自分のIC定期を持って立っていた。
「それ自分のです。ありがとうございます。」
と答えると女子高生は嬉しそうな顔をした。
「どういたしまして、私は
「なぜ自分の名前を?」
「そのIC定期に書いてましたよ。それよりも講習に遅れますよ。」
そう言って自分と彼女は教室に向かった。
講習は午前の部が終わり外のベンチで昼食を取ろうとしてると玉野さんが声をかけてきた。
「ねぇ、昼ごはん一緒に食べない?私も友達が急に講習に来れなくなって1人なの。」
と返事の前に既に隣に陣取っていた。
「別にいいが、何か用か?」
「そう、聞きたいことがあるんだけど化学の成績ってどれくらい?」
「秋にあった模試では偏差値80くらいだったぞ。これでも化学が1番得意だ。」
彼女は小さくガッツポーズをするとすぐに口を開いた。
「それで相談なんだけどね・・・私に化学を教えてください!」
「教えるのはいいが、いつだ?」
彼女は少し考えた後、申し訳なさそうに言った。
「これから1週間、講習の後に駅前のマスクドバーガーはどうかな?」
「うん?、これから1週間、毎日か?」
「うん、もちのろんだよ。」
自分はすでに合格ラインは超えているのであまり勉強しなくても大丈夫なので了承して、少し引っかかりを感じながらもベンチを後にした。
午後4時になり、講習1日目が終わった。筆箱を片づけていると
「マスクドバーガーに行こっか、ゆう君。ええっと、この呼び方嫌かな?」
無意識にも嫌な顔をしてしまっていたようで困らせてしまったようだ。
「すまないがその呼び方をいきなりされるのは少し気味が悪い。せめてあと1週間は普通に苗字か名前で呼んでくれ。」
すると彼女は少し安心した様子で呟いた。
「そうだよね。ごめんね、紫合君。 ってか1週間たったらもう講習終わっちゃってるよ。これは暗に君とは1週間きりの関係だよといっているの!?」
「まあ、これからの関係次第かな。」
この後もとりとめのない話をしながら、マスクドバーガーに移動した。
自分はジンジャーエール、彼女はオレンジジュースを頼むと席に着いた。
「さて、これから教えるわけだが具体的に化学のどこがわからないんだ?」
「かk……ぶ」
「ん?」
彼女は再び恥ずかしそうに小さな声ながらもはっきりと言った。
「化学全部」
自分は1週間も教えるということは教える範囲がとても広い可能性が高かったことにいまさらながら気づき、本当に彼女は受験に間に合うのかと心配になった。
「この予想問題集を解いて採点してから自分が間違えたところを教えるってかたちでいいか?」
「それで問題ないよ。」
その流れのまま勉強を始め、気づくともう午後9時になっていた。
「もういい時間だから終わりにするか。」
「そうだね。でも一つ、勉強に関係ないけど質問してもいいかな?」
「なんだ?」
「
「知らないな。」
嘘だ。自分は青山未来という女の子を知っている。過去、その子のことを1番知っていると勘違いするくらいには。
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