手塩にかけて育てた仲間に一流パーティーを追い出されたら、(自称)勇者と魔王と聖女と組んで世界を救う旅に出る事になったんだが?

斜偲泳(ななしの えい)

一巻 手塩にかけて育てた仲間に一流パーティーを追い出されたら、(自称)勇者と魔王と聖女と組んで世界を救う旅に出る事になったんだが?

第1話 プロローグ

  大抵の人間にとってそうであるように、彼にとってもその朝はなんの変哲もない朝だった。いつも通りの朝にして、いつも通りの日常である。


 とはいえだ。


 いつも通りの日常も、いつかは終わりが来るものである。


 唐突といえば唐突に。


 たとえば、いきなり重い病に倒れるとか。


 本人にとっては寝耳に水でも、周りで見ている者からすれば当然の結果という事もある。


 いつも通りの不摂生に、いつも通りの大酒を飲めば、身体は徐々に侵されて、ある日突然限界を迎える。


 あるいはそれは、自業自得の必然とも言えるのだが。


 予兆はあっただろう。


 本人すら、薄々は気づいていたのかもしれない。


 だが、見ないふりをした。


 見てしまえば、いつも通りは壊れてしまうから。


 いつも通りの生活というのは心地いい――かどうかはさておき、少なくとも、変える気が起きない程度には悪くないものである。


 だから人は、多少の難があってもいつも通りにしがみつく。


 そして、なにかが限界を迎え、唐突に――だが必然的に――終わりを迎える。


 よくある破滅の一つである。


 まぁ、あくまでこれは一例だが。


 これから起きる出来事は、終わってしまえば実にシンプルな話であり、皮肉と言えば皮肉な話でもある。


 ある意味では哀しい話かもしれないが、希望がないというわけでもない。


 終りがあれば始まりがある。


 というか、終わってしまえば、あとは新しく始めるしかないわけだが。





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