病み期

第5話 さようなら、日常

 学校に帰ってきて、私は心に穴が出来たようで、自分の感情が他人事に思えた。友人と上辺の付き合いしか出来なくなった。


 他の誰かが、私の視線を通じて生活している感覚。


 高校の記憶は殆ど無い。クラスメイトの顔すら思い出せない。


 弟は高校でもつまづき、ニートになった。私立の高い学費を親が払ったのに、結局引きこもりになった。何処までも屑だ。


 汚らわしい存在が毎日家にいるのが苦痛で、バイトを始めた。

 バイト先で知り合った人や高校でも付き合った人がいるが、キス以上は吐きそうになりすぐに関係は終わった。


 男が嫌いな訳ではない、だけど気持ちが追いつかない。

 高校のイツメンでの卒業旅行のホテルでAVを観るノリになったが、吐いてトイレに篭っていた。


 私は、もう普通の人生は歩めないのだろう。




 頼んでいた珈琲は、冷え切っていた。新しいのを飲もうか、と彼女は笑った。

 話は、まだ続くから。と。

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