第9話 金華サバ生ハム燻製と司牡丹純米「龍馬からの伝言」
初期の「美味しんぼ」で、料亭の主人に一番好きな刺身は何かと聞かれた山岡士郎が「サバの刺身が美味かった」と答えて、海原雄山に高笑いされるシーンがある。
それに対して山岡士郎は葉山の根付きサバを用意して、雄山にぎゃふんと言わせるのだが、当時の私はサバの刺身を食べたことがなかった。
そもそも刺身以外のサバを食べたことがあったかどうかさえも怪しい。
子供の頃は刺身、焼き魚、煮魚、干物、丸干しの違いは分かっても、魚の種類なんて全く気にしていなかったのだ。
肉だって、鶏肉は分かっても、牛と豚の違いは多分分かっていなかった。
そんな私がサバの刺身を初めて食べたのは、おそらく30歳を過ぎてから。
九州出張で地元庶民の食べ物、ゴマサバを食べて、その美味さに驚いたのだ。
やがて関サバ、というか豊後水道の根付きサバを食べることにより、自分の中での刺身No.1の地位は不動のものとなる。
今なら、山岡士郎の気持ちも分かる。
その後も買い物に行くたびにサバの刺身を求めるが、文化圏の違いもあり、締め鯖以外はまず手に入らない。
悶々としていたところに昨年、金華サバの漬け丼セットが通販でバーゲンしていることを知って、買い求めた。
冷凍の漬けだから新鮮とはいえないが、それでもやはり美味く、家族の評判も上々だった。
しかし、その時はバーゲンだったから安く手に入ったが、通常価格ではとても手が出ず、悶々とする日々はやはり続くことになる。
そんな中、金華サバの生ハム燻製が半額セールをしていることに気付く。
刺身ではないが、締め鯖ともまた違う調理法に興味をそそられ、購入。
本日、いただいた。
併せる酒は、これまた通販で買った司牡丹純米酒「龍馬からの伝言」。
もともとはウツボや鰹などの高知の食材とセット販売していたものを買ったのだが、酒の方は消費しきれずまだ残っていたのだ。
司牡丹を買うのは初めてで正直期待していなかったのだが、これが意外と美味かった。
金華サバ生ハムに戻る。
魚の生ハムには初挑戦で、どんな味わいかと期待しながら一口。
…美味い。
美味い、が、これは食べたことある味だぞ。
何の味だったかすぐに思い出す。
これはスモークサーモンの味だ。
サバだろうが鮭だろうが、燻製にすると似た味がするんだね。
スモークサーモンとくれば白ワイン。
日本酒とは、うーん、合わないとは言わない。
喧嘩はしないのだけど、なんかちがう。
先入観の問題かもしれないけれど、洋酒系が合うような味の気がする。
いぶりがっこ、あるよね。
大根の漬物を燻製にしたやつ。
あれは結構好きなのだけど、居酒屋なんかではクリームチーズとセットでメニューに載っていたりする。
やっぱり燻製は西洋のものと相性がいいのかもしれないね。
考えてみれば、ウイスキーなんかは内側を焦がした樽で保存するし、もともと燻製風味がついていると言えなくもない。
じゃあ今回の金華サバ生ハムも、シングルモルトウイスキーなんかと合わせればよかったのかなあ。
でももう、金華サバ食べちゃった。
それにシングルモルトは最近買ってない。
今度シングルモルトを買ったら、試してみるかな。
金華サバは高いので、多分スーパーで売ってるスモークサーモンと合わせることになるのだろうけど。
そういえば「Barレモンハート」で、アトランティックサーモンの燻製とアードベックを合わせるシーンがあったような気がするなあ。
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