星魔導士アリアは戦わない。

一ノ瀬からら

プロローグ

　大きな桜の木が、星々の小さな光を吸収して淡い蒼に輝いている。

　ソレは手入れのしていない、鋸（のこぎり）のように歪な形の刃物で、人の肉を削いでいた。

　怖い――そんな感情が前面に出て来るのを必死に抑えて、アリアたちは息を潜める。

　戦いたくない。いや、戦わない。

　例え相手が恐ろしい食人鬼（ゴブリン）だとしても、アリアたちは決して、狩猟以外で殺めたりはしない。

　それはアリアたちにとって唯一のルールだったから。

「あ、あれは話せる相手じゃないよね……？　どうしよう、アリア」

「何か……あるはずだよ。私たちにしかできないことが……」

『グルルルルゥ……ニンゲン、ニオイ、スル……チカクニ……イル……イルゾ……』

「え……」

「ノノ？　あのゴブリン、なんて言ったの？」

「アリア、これ……やばいかも……？」

『イルゾォ！　チカクニイイィィ！！！』

「アリア―――！！！」

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