もしかして 〜ゆきちゃんとゆうき〜



「私、勇気が欲しいです」



「僕?」



「違います。courageの方の勇気です」



「侑希さんの方の侑希じゃなかったか。ってか、なんでSOLD OUTとSALEがわからないのにcourageはわかるんだよ」



「聞いてください、今日……」



「うん」



「あれ? どこかで見たことあるな、って人が百貨店にいたんですよ」



「うんうん」



「その人が高校の頃の同級生とそっくりで」



「うん」



「でもちょっと違うような気がしてたんです」



「うん」



「そうしたら、その人がお店から出てっちゃって」



「うん」



「話しかければよかったなーって」



「おん」



「……」



「……」



「……」



「……」



「って、話なんですけど」



「これだけ引っ張ってまさか、これだけのオチ……?」



「それで最初の勇気が欲しいってことです。見事な伏線回収ですね」



「ぜんっぜん伏線にもなってないし、回収とも言わないし……。どうしたの? お話の技術どっかに置いてきた?」



「女の人のお話を聞いてくれない人は嫌われちゃいますよ。どれだけ中身のないお話でも真摯に聞かなきゃダメなんです」



「いや、ちゃんと聞いてたつもりなんだけど……。あまりにもなんて返していいかわからなかったから……」


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