こっちだっけ? 〜ゆきちゃんとあっちですよ〜



侑希「あれ? この道……」



ゆき「どうしたんですか?」



侑希「あれれ? ちょっと、待ってね」



ゆき「もしかして道に迷ったんですか?」



侑希「いや、そんなことはないと思うけど……。あれれれ?」



夢葵ゆめき「なんで? 来た道戻ればいいだけじゃん」



侑希「お前運転できないくせに……。あれれれれ? ほんとに困ったな」



ゆき「遊園地がこっちですよね。だったら、この道に沿って行けば……。あれ?」



侑希「でしょ。おかしいんだよね。この地図が間違ってるのかな……」



夢葵「ねー、退屈ー。なんか面白いことないー?」



侑希「うるさいな。今帰り道考えてるんだよ。夢葵も手伝って」



夢葵「普通迷子になんてなるかな。地図見せて。どれどれ……、今どこにいるの?」



侑希「ここ」



夢葵「で、侑希のアパートはどこ?」



侑希「ここ」



夢葵「じゃあ、この道に沿って行けば……、あれ?」



侑希「ね。地図だと一本道なのに、目の前に分かれ道があるんだよね。どっちに行けばいいんだろう」



夢葵「ナビは?」



〈コノ道ヲ直進デス〉



夢葵「何このナビ? 故障?」



侑希「二本の分かれ道なのに直進ですって、どっちかわからないよね?」



夢葵「うーん……」



ゆき「あ! わかっちゃいましたよ」



侑希「?」



ゆき「たぶんこれ、おかしいんですよ」



侑希「そうだよね。やっぱりこの地図おかしいよね」



ゆき「違います。地図じゃないです」



侑希「? ナビが間違ってるってこと?」



ゆき「そうじゃないです」



侑希「どういうこと?」



ゆき「道です」



侑希「?」



ゆき「道がおかしいんです」



侑希「そもそもこの道がこの地図の場所じゃないってこと?」



ゆき「違います」



侑希「??」



ゆき「本来この道は一本道なんです。でも、私たちを迷わせるために分かれ道に姿を変えたんです。そして、私たちをあらぬ方向へ導いて、悪いことをしようと企んでるんです。つまり、地図でもナビでもなく、この道がおかしいんです!」



侑希「ふーん。さて、どうやって帰ろうか」



ゆき「ちょっと、ひどくないですか!?」



侑希「そんなわけないよね。まじめに考えてよ」



ゆき「侑希さんひどいです……。あ!」



侑希「今度は何?」



ゆき「今度こそわかりました! 夢葵ちゃん、お菓子持ってませんか?」



夢葵「持ってるよー。はい」



ゆき「ありがとうございます。……いきます」



侑希「何するの?」



ゆき「悪霊降リ給ヘ。さすれば、汝には菓子が与えられるだろう」



侑希「何? 何?」



鬼 「わーい。お菓子だー」



侑希「あ、いつかの鬼じゃん。もしかして、こいつの仕業か」



ゆき「ほら、鬼さん。お菓子をあげるので、もういたずらはしないでください」



鬼 「えー、どうしよう。道を元に戻せば、お菓子くれるの?」



ゆき「うん。あげるよ」



鬼 「できれば、人間の血が欲しいなー」



ゆき「む。そんなことをしたら、和尚さんを呼びますよ」



鬼 「やだ! じゃあ、お菓子でいいや」



ゆき「はい。どうぞ」



鬼 「ありがとう。またねー」





ゆき「これで帰れますよ」



侑希「よかった。道直ったね。間違った方に行ってたらどうなってたんだろう……」



夢葵「それはそれで面白そうだけどなー」


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