本年もどうぞよろしくお願いいたします



「侑希さん。ほら、遅いですよ! 早く、早く!」



「ちょっと待って。階段きつすぎるよ」



「もう、普段から運動してないからですよ」



「別に神様は逃げるわけじゃないんだからそんなに急がなくても……」



「早くしないとおみくじが売り切れちゃいます!」



「確かにすごい人だけど、さすがにおみくじが売り切れるところは見たことないよ。大丈夫じゃない?」



「そうですか?」



「うん。せっかく初詣はつもうでに来たんだしゆっくり歩こ?」



「はい。……やっぱりいいですね。昨日はお寺で今日は神社ですもんね。なんかすごく日本を感じてる気がします」



「そうだね。僕もこんなに大晦日と正月を感じてるのは初めてかも」



「あ! 手水舎ちょうずやです! 侑希さん手の清め方とか知ってますか?」



「いや、全然わからないよ。昔教わったと思うけど覚えてないな」



「じゃあ、私が教えてあげます。実は私、小さい頃に巫女さんをやったことあるんですよ!」



「へぇ、そうだったんだ。似合いそうだね。一回見てみたいな」



「確か実家に写真があったと思います。今度見せてあげますね」



「うん。楽しみにしとくよ」



「あ! 侑希さん、違います! 右手からじゃないですよ。こうやって柄杓ひしゃくは右手で持って左手から……」



「なんかゆきちゃん楽しそうだね」



「……はい。やっぱり侑希さんといると楽しいです。元旦から一緒にいられるなんて思ってなかったので……」



「そうやって言ってくれると僕も嬉しいよ。さあ、一緒にお参りに行こうか」



「はい! 本殿はこの階段を登って、さらにあそこに見える階段を登ったその先ですね」



「え? 遠くない? 思ったよりも階段が多いんだけど」



「もう、そんなこと言ってちゃ情けないですよ。本殿でお参りをして、おみくじを引くまでは私帰りませんよ」



「冗談だよ。ゆきちゃんは何をお願いするかもう決まってるの?」



「もちろん、決まってますよ」



「へぇ、何をお願いするの?」



「……内緒です」



「え!? 教えてくれないの?」



「じゃあ、侑希さんは何をお願いするんですか?」



「そんなの、今年もゆきちゃんと一緒にいられますように、ってお願いするつもりだよ」



「……、……そういうところですよ。侑希さん」



「ん?」



「えへへ。なんでもないです」



「何? 気になるんだけど」



「ダメです。教えません」



「それならお願いごとは、ゆきちゃんのお願いごとを教えてください、に変えようかな」



「それもダメです! 変えないでください!」



「じゃあ、教えて?」



「……えへへ。侑希さんとずっと、一緒にいられますように」


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