大晦日



「わー、思ったよりたくさん人がいますね。私大晦日にお寺に来るのなんて初めてです」



「僕も。真夜中なのにこんなに人がいるとは思わなかったよ」



「あ! ありました! 鐘です! 懐かしいです。侑希ゆうきさんが熱を出された時にアパートに運んだやつですね」



「いや、あんなのどうやって持ってきたの。無理でしょ」



「冗談です。……さすがにちょっと寒いですね。侑希さん、何か温かい飲み物持ってないですか?」



「あ、さっき自販機で買ったお茶があるよ。はい」



「ありがとうございます。はぁー、暖かいです」



「家に帰ったら一緒にあったかいもの食べようか」



「そうですね。あ!」



「ん? どうしたの?」



「上です! 上を見てください!」



「うわ、すごい。星だ」



「綺麗な星ですね。やっぱり街中と違って山の方だとくっきり見えます」



「うん。これが見えただけでも来てよかったね」



「はい。……ねぇ、侑希さん」



「ん?」



「……来年も一緒にいてくれますか?」



「どうしたの? 急に。そんなの当たり前だよ」



「えへへ。よかったです」



「……」



「……ねぇ、侑希さん」



「?」



「……来年も、よろしくお願いします」



「うん。こちらこそ。よろしくね」


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