熱が出た 〜ゆきちゃんと看病〜



侑希ゆうきさん、大丈夫ですか?」



「……うん、さっきよりはだいぶ楽になったかな。熱も引いてきたみたい。仕事終わりにわざわざごめんね」



「全然大丈夫です。よくなってきたみたいで安心しました」



「ありがとう。はぁ、明日は仕事行けるかな」



「今はゆっくり休むことに専念してください。無理しちゃダメですよ」



「うん。そうするよ」



「……」



「……」



「ねぇ、侑希さん。退屈じゃないですか?」



「退屈? まぁ、ちょっとだるいから動く気にはならないけど、退屈といえば退屈だね。でも、君が来てくれたからそんなこともないよ」



「そうですか。実は退屈しのぎになるかなって思う物を持ってきたんですけど」



「ん? 何を持ってきてくれたの?」



「まずはかるたです」



「かるた? かるたはベットじゃできないんじゃないかな? あと、二人しかいないし」



「これとかどうですか。福笑いです」



「福笑いかー。この体調で目隠しはしたくないかな。くらくらしそう」



「……。だったら、凧揚げしませんか。凧持ってきてるんです」



「凧揚げは室内じゃできないと思うよ」



「……。……。羽付きはダメですか?」



「負けると墨で顔に落書きされるんだったよね。お風呂入りたくなからちょっとな」



「……。……。……。除夜じょやかねです。これでかねきしませんか?」



「うーん。全身を使う系は無理かなー」



「ねえ、侑希さん! さっきからツッコミのキレが悪いですよ! いやお正月か、っていうツッコミ待ちだったんですけど。そのために除夜の鐘まで用意したのに。どこか体調でも悪いですか?」



「いや、ほんとに体調悪いんだけど……」



「……除夜の鐘にもつっこんでくれないし」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る