街中デート 〜ゆきちゃんとご飯〜



「お腹空いてきたね。そろそろご飯でも食べようか。何が食べたい?」



「あなたの食べたい物でいいですよ」



「じゃあ、ハンバーグとかどう?」



「あー。ごめんなさい。私、ハンバーグ苦手なんです」



「そうなんだ。知らなかった」



「その、嫌な思い出があって」



「へー。どんなことがあったの?」



「ある日の給食のメニューがハンバーグだったんですよ。あ、教員になってからの話です。それで、その日に学年主任の先生に怒られちゃって……。今でもハンバーグを食べると怒られたことを思い出すんです」



「ねぇ、それハンバーグ悪くなくない? ゆきちゃんが学年主任の先生を怒らせたのが悪いんでしょ。普通そんなことでハンバーグダメにならないよ」



「でも、ごめんなさい。ハンバーグはちょっと」



「まぁ、いいけど。無理して食べる物でもないもんね。じゃあ、うどんとかどう? おいしいって評判のうどん屋さんが近くにあるんだけど」



「実はうどんもダメなんです。その、親御さんに怒られちゃって」



「給食にうどんが出た日にってこと?」



「はい」



「君それだと嫌なことがあった日に食べた物、全部食べられないことになるけど」



「でも、うどんは……。侑希ゆうきさんの食べたい物でいいとか言っておいてごめんなさい」



「そっか。まぁ、わかったよ。だったら、お寿司とかどう? ちょっと高いけど嫌なことがあった日にお寿司なんて食べないだろうし、給食でも出ないでしょ」



「本当にごめんなさい。私、お寿司も苦手なんです」



「お寿司食べた日にも怒られたのか。今度は誰に怒られたの?」



「生魚ダメなんです」


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