彼女がお祭りにふんどしを締めてきた話

氷川 晴名

祭りの夜に 〜ゆきちゃんと花火デート〜



「こんばんは! お待たせしちゃいましたか?」



「いや、僕も今着いたところだよ」



「そうですか。それならよかったです」



「うん。じゃあ、行こっか」



「……私、侑希ゆうきさんとお祭りに行けるのがとても楽しみでした」



「そんなの僕もだよ」



「えへへ。それで気合を入れてついつい締めてきちゃったんです」



「ん? しめる? しめるって何を?」



「ふんどしです」



「え?」



「ふんどしです」



「ふんどしってあの、お尻丸出しの?」



「はい。そのふんどしです」



「じゃあ、そのロングスカートの下はふんどしなの?」



「はい。ふんどしです」



「は?」



「見てください! 法被はっぴも用意してきました」



「え? ゆきちゃん今日し物でもあるの? お神輿みこし担ぐとか」



「いいえ。ありませんけど」



「じゃあなんで法被とふんどし?」



「お祭りといったら法被とふんどしじゃないですか」



「もう一回確認するけど、今日演し物の予定でもあるの?」



「あなたと的屋さんとか花火を見る予定ですよ」



「だったら浴衣じゃない?」



「へ?」



「普通それ浴衣だと思うよ」



「そうなんですか?」



「川沿いでりんご飴食べながら花火見てる浴衣姿の彼女がテンプレだよ」



「法被姿の彼女に引っ張られながら的屋さんを見て回るのもオツだと思いますよ」



「わかったわかった。法被はまだいいとしてもふんどしはさすがにやめない? 一緒にいるこっちが恥ずかしいよ」



「上下そろえないとおかしくないですか? あ、もしかして侑希さんあれですか? 上がスーツなのに下はパジャマとかで街歩いても平気なタイプですか?」



「最近流行りの面接の話?」



「だから上が法被なら下はふんどしじゃないとおかしいんです」



「僕はお尻丸出しで外歩く方がおかしいと思うけど」



「あ、それとちゃんとシャツの下はさらしを巻いてますよ」



「何してんの?」



「わあ! 見てください侑希さん! 花火が上がりましたよ!」



「話聞いて?」


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