《パンツ製造》スキルはゴミだと追放されたけど、僕のパンツを履くと強くなれると女の子たちからは評判です!実は僕製パンツは僕への好感度が高いほど、装備した人を強化する伝説級の神アイテムでした!

月ノみんと@成長革命2巻発売

第1話 世界初のパンツ製造専門職人、爆誕!!!!


「おい! ルイン・パンツァー! そこの銀髪のトゲトゲ頭のボウズ! お前だよ! さっさと返事しやがれ!」

「は、はい……! 今行きます!」


 製造職クラフトギルドの長――ゴリボス・ゴリヌソン親方に呼ばれて、僕は運んでいた荷物を床におろした。


「まったく、呼んだらすぐに来いといつも言ってるだろ! 何度言えばわかるんだこのノロマめ!」

「す、すみません……色々いそがしくて」


「いいわけをするな! お前みたいな奴がいそがしいわけあるか! 下っ端のくせに!」

「ご、ごめんなさい」


 親方はいつもいいわけをするなというけれど……。

 実際、僕はみんなから雑用を押し付けられてすごくいそがしい。


「それで、何の用でしょうか?」

「はぁ? 寝ぼけたことを言うな! 前から言っていただろう。今日のためにお前のようなグズでもクビにせずに雇ってきたんだ。しっかり元を取らせてくれよ?」


「あ……! そうか、今日は【鑑定】でしたね」

「そうだ。レアなスキルを引いて、俺を楽させてくれよ? にっひっひ」


 僕たち職人見習いは、15歳になると【鑑定】を受ける。

 【鑑定】で役に立つ生産系のスキルを得て、そこで初めて一人前と認められるのだ。

 得られるスキルは、15歳までの人生経験で決まるらしい。

 だからこうやって何年も下働きをさせるそうだ。


「鑑定にも金がかかるんだからな! 下手なスキル引いたら承知しょうちしねえぞ」

「わ、わかってますよ……」


 といっても、僕が気合を入れたところでスキルの内容は変わらないだろうけど。

 僕としても、いいスキルを引いていい職人になりたい!


「えい――!」


 鑑定用のカードボックスから、カードを一枚引く。

 そこに書かれたスキルで、僕の今後の人生が決まる。

 武器製造スキルなら、武器職人になるし、防具職人なら、防具専門の職人になる運命だ。

 鑑定カードの内容は、引いた人物の魔力を読み取って変わるらしい。


「どうだ? 見せてみろ」

「そ、それが……」

「いいからよこせ!」

「あ……」


 そう、僕が引いたスキルは――。



「《パンツ製造》――だと……?」



 ゴリボス親方がそう口に出した途端、ギルド中が笑いに包まれた。


「ぎゃっはっは! パンツ野郎の誕生だ!」

「なんだよそのスキル! 聞いたことねえ!」

「そんなのいちいちスキルで作らなくても、市場にいって買ってくればいいだけだろ! ぎゃはははははは!」

「この15年間なにやってきたんだよルイン! お前パンツのことばっか考えてたんじゃねえのか!?」


 などと、散々な言われようだ。

 僕だって、本当はもっとかっこいいスキルがよかったさ。

 でも、これが神様から与えられた僕の天職なんだから仕方ない。

 どういう判断なのかはわからないけど、俺にはパンツがふさわしいようだ。

 不名誉だけどね……。


「なんで何年も使えねえやつを置いてやったのにクソスキルなんだよ!」


 ――ドン!


 ゴリボス親方は力いっぱいに、カードを壁に叩きつけた。

 そのあまりの怪力で、壁に穴が開いてひびが入る。


「ご、ゴリボス親方、落ち着いてください……」


 親方をなだめたのは、ブータックさんだ。

 性格は最悪で嫌われているけど、腕のいい職人さんだ。


「はぁ!? これが落ち着いていられるかよ! 金を返せ!」

「まあまあ、ホラ。ルインくんも謝りなさい!」


「……え?」


 どうして僕が謝らなきゃいけないんだろう……?

 僕、なにか悪いことをしたかなぁ?

 たしかに《パンツ製造》スキルは一見つかえなそうだけど、まだ試したわけじゃないし……。

 なにか僕に責任があるとは思えない。


「ご、ゴメンナサイ……」


 不本意ながらも、一応頭を下げておく。

 少しばかりの抵抗として、口をとがらせ、不満の意思をにじませておいた。


「おい……試しになにか作ってみろ」


 親方は怒りを必死にこらえながら、なんとか理性を保ちつつそう言った。

 これが僕にとって、最後のチャンスかもしれない!


「は、はい」



 ――《パンツ製造クリエイト》!



 僕はスキルを使って、男性用パンツと女性用パンツをそれぞれ2枚ずつ製造した。

 呪文をとなえたときに、少し笑い声が聞こえた気がするけど、気にしない。

 男性用のは無地の灰色のパンツ。

 女性用のは少し可愛さのあるレースの黒。


「よし、これを俺とブータックで試着しておく。もし履き心地やステータスに異常があったら、即刻クビだからな! わかっているだろうな!」

「は、はい……!」


「もしかしたら履いて一日経てばステータスが上がるとかの効果があるかもしれん。だがこれはあくまで念のためだ。お前のパンツに期待などみじんもしていないから、そこのところ、勘違いするなよ?」

「わかっています。チャンスを頂けて感謝しています!」


 僕だってクビになりたくはない。

 せっかく下積みを頑張ってきたんだし、認められたい。

 明日、親方たちが最高の履き心地だったと言ってくれることを祈ろう。


「これは……どうしようかな」


 僕の手元には女性用のパンツがまだ2枚残っている。

 できればこれも誰かに試着してもらいたい。

 もしかしたら男女で装備時の使用効果が違ったりするかもしれないしね。

 だけどうちのギルドは男所帯だし……。


「すまない。私も一枚試させてもらってもいいだろうか?」

「あなたは……」


 僕に声をかけてきたのは、長く伸ばした白い髪が印象的な、褐色肌の美しい女性だった。

 背も高くてスタイル抜群で、思わず見とれてしまう。

 青い目が綺麗で吸い込まれそうだ……。

 服装をみるに、たぶん冒険者だと思うけど……?


「私はユミナ・ルナフィリア。冒険者をしている。最近いいパンツがなくて、ちょうどパンツを探していたんだよ。それは耐久性が高そうだ」

「……って、ユミナ・ルナフィリアって、ユミナ・ルナフィリアさんですか!?」


「そうだが……? 私を知っているのか?」

「当然ですよ! Sランク冒険者なんですから!」


 うちのギルドを使ってくれていたなんて、感激だ!

 それにしてもこんな美しくて強い人が、どうして僕のパンツに興味を?


「あの……パンツを試着してもらえるのはうれしいんですけど、どうして僕なんかに声をかけてくれたんですか?」


「恥ずかしい話だが……私は仕事がら激しく動くせいで、どうしてもパンツの消耗が早いんだ。摩擦でな……。既製品のパンツでは一週間も持たないんだよ」


「なるほど……そうなんですか。さすがはSランク冒険者ですね。戦いの中でパンツが削れるなんて話、聞いたことありませんでしたよ」


 僕の作ったパンツを一枚、ユミナさんに渡して、もう一枚をどうするか考えていたときだ。

 突然、横から別の女性が声をかけてきた。



「あのー……! 私も……一枚もらっていいですかっ????」




――――――――――――――――――

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