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ぐるりと周囲を壁に囲まれたケージ。壁といっても、ただの外壁とは違う。ケージ内は一つの街。街並みや人々が生活する姿は、時代にすると1980年〜90年代頃。中には自分が閉じ込められたまちの中だと気づかない者もいた。

何処どこへ行っても、最後に辿り着くのはゴールのない迷路のよう。

普段ふだん、ゲート[出入り口]が開く事はあまりなく、監視の孵化人間自体が鍵のような役割を持っている。


〔孵化人間の住む都市フォレストが映し出される〕


都市部の至る箇所に、立体化された昔の人間達の姿があった。空間を風船が浮遊し流れるように歩いている。とてもリアルに再現され、都市を往来する孵化人間たちに混ざっている。

その中に、携帯電話を持つ昔の人間の再現された姿。それを喰い入るように見つめている孵化人間がいた。


西暦2000年代前期、当たり前にあった折りたたみ携帯電話やスマートフォンも、この時代にとっては既に幻の産物である。






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