四年ぶりに出所してくる反社会的勢力の男と、それを迎えに来た同じく反社の男の、小さな旅行のお話。
現代もの、それもアウトローもののボーイズラブです。
彼らの関係性にこの距離感、またその醸す雰囲気がもう本当にたまらない作品。
作品紹介文にもあるとおり、「性描写有り」の表記は本当に念の為程度なのですが(つまり作中に性描写は実質ほぼない)、しかしそれはそれとして漂う色香がもう途轍もないことになっていました。いやほんと良い……。
人物造形の魅力、というかもう山田さんが素敵です。
この抗い難い謎の色香! いやどう見てもヤバい人で、身近にいたらきっと困っちゃうんじゃないかと思うんですけど、でもそれを魅力的に見せちゃうこの〝人の描き方〟がすごい。
欠落をほぼそのまま書いているのに、それを受け取る時点でもう魅力になってるこの不思議。
物語も好きです。こちらはネタバレになるため詳しくは触れませんが、主人公(里中さん)の抱えた劣等感に共感すると同時に、でも「そこにはきっと彼自身の思い込みが多分に含まれている」と察せられるところが本当に大好き。
ふたりともいろいろダメな人のはずなのに、でも決してダメなばかりではないと(なんなら魅力に見えるように)伝えてくれる、その匙加減のようなものが素敵な作品でした。小難しいことはさておき単純に浸れるお話だと思います。