第2話 メンヘラ①

私の友人である、Sさんという方から聞いた話になります。


Sさんは大学時代に、仲の良かったTさんから彼女のOさんについて相談を受けていたそうです。


Oさんは1つ下の大学2年生で、バイト先で知り合ってOさんの方から告白されて付き合ったと話していました。


しかし、かなり束縛が強い彼女のようで、特に伝えてないもいないのにTさんが友達と遊んでる場所で見かけたり、大学の中でも視線を感じるとOさん見ていたりと、段々鬱陶しく思い初めて来たそうです。


LINEや電話も異常なほど多く、LINEの返信をしないと「どうしたの?」「今日バイト休みだよね?」「今ひとりじゃないの?」「家にいる?」「おーい。」「何で既読つかないの?」など、1時間放置するだけで70〜80通の未読が溜まるのも当たり前。


夜は毎日通話しながら、そのまま電話を繋いで寝る。


そんな束縛が3ヶ月ほど続き、勉強やサークル活動にも支障をきたしてので、別れる決意をしたそうです。


TさんはOさんの家に行き別れ話を切り出すと、「あなたは私が居なきゃ駄目なの!」「私が守ってあげるから大丈夫。」「別れるなんて、絶対に認めない!」など、半分支離滅裂で、まともに話し合いも出来なかったと話していました。


これ以上話しても時間の無駄だと判断したTさんは、少し可哀想だと思いながらも、強引に押し切るような形で別れを告げて終わらせたそうです。


Oさんが居るバイトも辞めたそうですが、同じ大学なので、どうしても顔を合わせてしまいます。


東北の小さな大学だったので、学食でも見かける事が多く、出来るだけ気にしないようにしていたそうなのですが、視線を感じてそっちの方向を見るとOさんが見つめている。


学食だけではなく、講義を受けている教室の廊下からTさんを見ていたりと、ストーカーのように大学内で付きまとうようになってしまったと言います。


LINEやSNSはブロックしていたので、連絡が来ることは無かったそうですが、大学内で常に見られていることに嫌気がさし、ついに直接Oさんに大学内で付きまとうのを辞めてくれ!と伝えたそうです。


するとOさんは、「本当にいいのね?もう私は関係ないから。」とだけ言って去っていきました。


Tさんは、Oさんが何を言っているのか理解出来ませんでしたが、付きまとわれていた事にかなり怒っていたので、「これで清々するわー」と上機嫌だったそうです。


その次の日から、大学内でもOさんを見かけることはほとんど無くなりました。


しかし、夜中に一人暮らししていたTさんの玄関のドアを叩かれたり、深夜にチャイムを押されたりと嫌がらせのような事をするようになったのです。


深夜1時が過ぎた頃、「ドンドンドンドンドン」とドアをノックされ、ドアスコープを覗くと誰も居ない。


それから10分後くらいに、「ピンポーン」とチャイムが鳴る。


Tさんは、頭には来ましたが自分から半ば強引に別れた負い目もあり、多少は仕方ないと思っていたそうです。


元々メンヘラ気質な彼女だったので、とりあえず放っておくことにしました。


しかし、その嫌がらせは2週間も続いたのです。


毎日の事なので、さすがに精神的にもキツくなり、そこで初めてTさんにどうしたらいいか相談してきたと言います。


明らかに異常な執着心を感じたSさんは、Tさんが1人で対応して万が一に刺されでもしたら大変なので、2人で対応する事に決めました。


SさんがTさんの部屋に泊まり、ドアが叩かれたらすぐに2人で飛び出して、Oさんを説教しようという話でまとまったそうです。


そうしてSさんは、Tさんの部屋で2人で飲んでいると、「ドンドンドンドンドン」と深夜1時過ぎたあたりで玄関のドアを叩かれる音が。


「ほら…来ただろ。でも、次にチャイムが鳴るから、そこで一気に玄関を開けよう。」


TさんとSさんは玄関前で待機し、チャイムに備えます。


「ピンポー…」とチャイムが鳴った瞬間に、Tさんは物凄い勢いで、ドアを「バンッ!」と開けましたが、そこには誰もいない。


Sさんもすぐに後を追って、玄関に飛び出しますが、全く人の気配が無かったそうです。


「おい!O!いるんだろ!おいッ!!」


Tさんは怒鳴りながら、周囲を探しましたが、やはり誰もいない。


少し気味が悪いと感じたSさんは、取り敢えずTさんをなだめて、一旦部屋に戻しました。


イライラが収まらないTさんは、ブロックしていたOさんのLINEを解除し、文句を言うために電話を掛けたそうです。


しかし、Oさんは電話に出ない。


深夜2時を回っていたこともあり、その日は寝て、翌日2人でOさんを問い詰めようという事になりました。


朝になり2人で大学へ向かい、昼になって学食でOさんを探しますが見つからない。


講義が無いのかも知れないということで、2人はOさんの働くバイト先に行くことにしました。


夕方になってOさんの働くバイト先へ行くと、店長さんが「おう!久しぶりだなぁ!」と出迎えてくれ、TさんはOさんが次いつバイトのシフトに入るかを尋ねることに。


「あれ?お前とOさんって付き合ってたんじゃないのか?あの子なら、2週間前くらいから身内に不幸があったとかで、地元に帰るってバイト休んでるぞ?」と店長は話します。


「いや、それが…。もう別れたんですけど、最近嫌がらせが酷いんですよ…。」と、この2週間の出来事をTさんは店長に話しましたが、「でも実家に帰るって言ってたしなぁ…。本当にOが原因なのか?」と店長も困った様子で話しを聞いていました。


2人は困惑しながら店を出てTさんの部屋に戻り、あの嫌がらせが本当にOさんでは無いのかを話し合うことに。


しかし、このままでは埒が明かないので、とりあえずこの日も夜に2人でOさんを待ち伏せすることにしたそうです。


Tさんは、Oさんが実家に帰ったなんて嘘だと言い、全く信じていませんでした。


Sさんはあまり乗り気では無かったそうですが、あと1日だけならと付き合うことにしたそうです。


そして深夜0時を過ぎた頃、「テン♪テンテン♪テンテテテンテンテン♪」とTさんのスマホの着信音が鳴ると、Oさんからの電話でした。

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