4月1日 拝啓
拝啓、かわいい妹へ。
私はって言うより、私たち姉妹は、何かと理由をつけてお手紙を送りあいっこするような仲です。
母親には「きもい」って言われるんですけど、お誕生日だったり、受験前だったり、部活の大会、はたまたデートのお誘いなんかもお手紙書いてさそったりするんですよ。
私は明日引っ越します。
十八年間、生まれた時からずーっと過ごしたこの家を出ていきます。なのでやっぱり今日も手紙を書きました。
便箋に綴れる文字はそんなに多くないです。
溢れる想いも小さくぎゅっと簡潔にまとめないと封筒からはみ出してしまいます。
だから今日、積み込んだダンボールの重さについても、最後だからとぴかぴかに磨いた床のことも私の胸の中に綴る他ないんです。
よろよろと階段を降りながら、掃除機をかけながら寂しくなってしまったこの思いも、明日も明後日も私の居場所が空白になってしまう、となんとも言えない空虚な気持ちでいっぱいになったことも便箋には紡げない。
二人で並べた机。あなたの隣を空っぽにしてしまったわ。
毎晩夜更かししたリビング。私のコップはもう無いよ。
おやすみを言って電気を消してくれる相手もいないし、あなたが朝起きても、二段ベッドの上の段には誰も寝ていない。
私が物心ついた時から。
あなたが生まれた時から。
いつも私の隣にいてくれてありがとう。
些細なことでケンカしたり、ガキくさい罵りあいもした。
お互いに時間が合えば、手を繋いで二人で遠くに出かけたりもした。
夕飯を二人で食べながらYouTube見て、同じところでバカ笑いもした。
意味もなく、翌日には忘れてしまうようなどうでもいい話を永遠する夜更かしもほぼ毎日してた。
あなたのいない毎日はどれだけつまらないんだろうね。
今生の別れじゃないけどさ、2週間後にまた帰ってけるけどさ。寂しいよ。
あなたの胸をぐっしょり濡らすほど泣いてしまったのも一度や二度じゃないよね。
無言で抱きついた私の背中をあやすようにずっと撫でてくれた日も何日あったんだろう。
私、全然お姉ちゃんしてないね。
それでも、あなたと過ごす日がこの先も続く限り、精一杯あなたのお姉ちゃんをやろうと思うよ。
大好きじゃたりない。
愛してるよ。
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