犬神誠太の犯罪
冷門 風之助
その1
俺の名は
職業は私立探偵。
人の出来ないことをやり、人の探せないものを探す。
それを
ああ、ここでちょっと本筋から逸れて、”この時代”について説明しておこう。
”この時代”。舞台は紛れもなく日本で、時代は21世紀初頭。
だが、俺の記録を愛読している諸君の生きている世の中とは、少しだけ(かなり、というべきか)世界観が変わっているのだ。
まず、私立探偵は国が発行した免許を所持し、拳銃の所持・携帯・使用が許されている。
何故そうなったかって?
最大の理由は、犯罪の増加、そして一般国民の銃の所持がなし崩し的に自由になってしまったからさ。
(ただ、免許なしでも探偵は出来るが、それについては説明が面倒になるから、別の記録を読んでくれ)。
更に面倒な手続きはいるものの、
だから、今までじゃあやれない荒っぽい仕事も出来る。
それが俺達の生きる”今の日本”の探偵という商売だ。
余計な前置きが長くなったな。それじゃ本題に入ろうか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その依頼人が、新宿にある俺のネグラ
彼女は事務所のドアを二度ノックして、俺が”どうぞ”と声を掛けても、直ぐには入ってこずに、立ち止まり、深々と頭を下げてから、ゆっくりとした足取りでソファのところまで歩くと、そこで再び立ち止まって、また頭を下げ、それから静かに腰を掛けた。
いつものルーティーン通り、俺は砂糖とミルク抜きのブラックを
彼女は俺が勧める前に、カップを両手で持ち、
『兄の行方を捜してください』と切り出した。
『私は探偵です。法で規制されていること以外に、離婚と結婚に関する仕事は基本引き受けません。それ以外なら、筋さえ通っていれば、大抵は大丈夫です。しかし事前に内容をご説明頂けますか?』
俺の言葉に彼女は頷き、傍らに置いたハンドバッグを開け、中から小さなプラスチックのアルバムを取り出した。
『これが・・・・兄です』
一頁目を開くと、そこには四人の人物が写っていた。
スーツを着て眼鏡をかけた、如何にも実直そのものと言った中年の男性と、グレーのスーツを着た、心持丸顔の、どこにでもいる、30代後半と
ピンク色のワンピース姿に、髪を二つに分けた、小学校四年生ほどの少女。それから紺のブレザーに、チェックのズボンを履き、黒縁の眼鏡をかけた、父親によく似た10代半ばの少年である。
彼女が指さしたのは、その少年だった。
少年の名は、
依頼人である
『この写真は、私が小学校三年生の時に写したものですから、今から13年前のものです』
彼女はアルバムを閉じ、別に取り出したハンカチで口を押え、何かをこらえるようにしていたが、しばらく経ってから先を続けた。
『兄が・・・・兄が消えてしまったんです。突然に』
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