第27話 オーダーメイド

 ソーダ水とシナモンクッキーにお口の中が大満足してとりあえず人心地。


 さて、それでは、お姉さんの話と言うのは?



「まずは、アタシが作った装備を買ってくれてありがとう。休みの日はバザーでも出品してるけど、普段は冒険者もしてるから、あの店に委託販売してるんだ」



 ドワーフ姉さんの名前はベゼリー。


 故郷のドワーフ郷を出て、冒険者をしながら、鍛冶師として修行中の身だそうだ。



「アタシはペネロッテ。ずっと山育ちで、あんまり人里は知らないの。だから装備も自分で錬金術で作った簡単なものしかなくてね」


 アタシはちらっとポンチョをめくってみせる。まだ着替えてないのでウサ皮のブラと素肌ですよ。それを見たベゼリーは目を丸くする。


「なんとまあ、そんな格好だったのか。そりゃ装備新調したくなるよな。錬金術使えるなんて良いな。オレは使えないから」

「職人の作るものには敵わないかも。向き不向きはあるだろうね」


 確かに、とうなずくベゼリー。


「まさか、シナギー族向けの装備をヒューマンの子供冒険者が買うと思わなかったんで驚いたのさ。それに、アンタのサイズに合うものは、他にはあの店に無かったし、でも、アンタには見る目がある。だから、特注で何か作らせてもらえないかってね」


 シナギー族っていうのは成人してもヒューマンの子供くらいにしかならない、草原の半妖精とよばれる種族らしい。それは知らなかったや。で、その種族用の装備をアタシが買ったと……まあ、身体がお子さま体型なのは否定できないorz


 アタシが欲しいものは胸当て、腰鎧、ベルト、短剣、鉈、槍。これらを伝えると、ベゼリーは、


「素材持ち込みなら格安で作れるし、注文に合わせて細かな調整が可能だね。アンタは錬金術も使えるし、尚更自由が効きそうだ。それから、オレは工房を持ってないので、作る時は野外でドワーフの秘術を使って作ることになる」



 ドワーフの秘術がどんなものか興味があるねぇ。



 ともあれ、アタシ達は意気投合して、しばらく一緒に行動することにしたのでした。



 ベゼリーも若芽亭に泊まっていると言うので、その日は一緒に帰り、ナツコさんとマーニャを紹介したらビックリしてた。


 ちなみに、今持ってる素材で使えそうなのは、大鹿の角、大蜂の甲殻、それと、極楽鳥の羽根があることを伝えたら、ベゼリー目の色変えちゃって!


 虹魔石はまだ黙っておこう……


 なんか、明日からの素材採取に色々注文が付くみたいだけど……どんなものを作ろうとしてるんだか。

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