第20話 もっと早く聞いておくべきだった

 村の人達も解散して、アタシはエデンさんと二人で夕食を食べていた。


 アイスクリームはあくまでもオヤツ、別腹なんですよ。


 今回は、アタシ提供の熊の手の煮込みがメイン。手は二個しかないから、アタシとエデンさんでこっそり山分けのご馳走だ。村の皆さんにも内緒だそうな。


 アタシはリデル村の滞在を2日で終えて、明日からはランテルム公爵領を目指し、まずは隣の街カントスに向かう事とした。カントスとその隣ソトーゲまでは、モルドバー伯爵領らしい。ちなみに、今更ながら、この国はアーティザン王国と言うんだそうだ。


 そうだ、エデンさんに聞くのを忘れてた!


「エデンさん、アーダン・ドルアンテって言う騎士がこの村に来なかった?」


 エデンさんが表情を変える。


「おう、3週間位前に来たぞ。極楽鳥を連れていることと言い、ランテルム公爵領に向かう事と言い、やはり何か関係があるのか?」


 アタシは、アーダンが死んでいた事と遺品の手帳、鎧を見せて、彼の意思を継ぎ、虹魔石を届ける事が当面の目的だと話した。


 頭を抱えるエデンさん。


「それを早く言えよぉ!」


 えっ!?


「さっき話した通り、重要物品は、ギルド間で送ることが出来るんだよ!治療に必要なものなら尚更だ!虹魔石をまずは送るのが最適だ!」


 そうか……わざわざ持って行かなくとも、方法があるんだ。あれ、そうすると、アタシの旅はいきなり終わり?


「取り敢えず明日の出発は中止だ。先方とギルド経由で連絡を取らなければならん。虹魔石を見せてくれるか?」


 アタシは収納から虹魔石を取り出した。全部で4個。


「4個もあるのかよ!騎士も冒険者も血眼になって探してた奴が!」


 そう言われましてもねえ。アタシ、何も悪いことしてないのに。なんだか泣けてきた。


「す、すまん、責めるつもりじゃなかったんだ。なんと言うか、運命の理不尽さに、つい、な」


 うん、それは判ってるけど、ね。


「とにかく、今日はゆっくり休んでくれ。それから、虹魔石は一個で報告しておく。残りは閉まってくれ」


 アタシは、落ち込んだ気分でそのまま部屋に戻る。


「そもそも、長旅のつもりだったからねえ。一刻を争う速さにはどうしてもならないと思ってたし、アナタに罪は無いわよ」


 ナツコさんは慰めてくれるけど。


「昨日の時点でエデンさんに話しておけば、1日は早くなったと思うとね……」


 この1日でユリース令嬢の容態が悪化してなければ良いけど。


 とは言え、ナツコさんの言うとおり、最初は何日掛かるかも分からなかったんだし。仕方ないかなあ?



 アタシはそんな風に愚痴りながら、寝落ちした。

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