第8話 ログハウスの山婆

 小川沿いに森を暫く歩くと、なんとログハウスを見つけた。


 誰か住んでるの?


 アタシは恐る恐る、扉をノックしてみる。



「すみませ~ん、誰かいますか~? 旅のものなんですけど~」


 中で気配がする。


「誰だい、こんな山奥に。山ン婆にわざわざ喰われに来たのかい?フェッフェッフェッ」


 オイオイ、山ン婆そのものの台詞っすね。


 でも、言うほど声は年取ってない。嗄れてもいないし、むしろ艶っぽい迫力ある声だ。しかも、この話し方、聞いたことがあるような……



 扉を開けて姿を現したのは、200cm位の大きなグラマラスな女性だった。



 褐色の肌に黄色のブラとパンツのみ。パツキン長髪の美人なお姉さん。でも、なんかその表情に見覚えあるような……



「もしかして、ゴンドワ山の大婆?」


 アタシの言葉に目を見張る。


「そう言うアンタは誰だい?」


「ペネロッテって、言ったら判る?」


 ますます目を見張る女性。


「嘘だろ!?アタシの最後の弟子がこんな小さい人間の少女だなんて!」


「それ言ったら、あんなしわくちゃで小さくなってた大婆が、何でそんな美人になってるの!?死期を悟って姿消したんじゃなかったの?」


「色々あってねぇ。アンタもかい!」



 そう、大婆も進化して生き長らえたんだって!



 アタシはログハウスに入れてもらい、くつろぐ事が出来た。なんかの毛皮が敷いてあって、その上に胡座座りだ。薪ストーブに火が燃やされ、ストーブ上の鉄板ではアタシが持ってきたウサギ肉がジュージュー言ってる。



「そうかい、混沌の渦にねえ……進化条件には色々あるんだねえ」


「大婆はどうなったの?」


「死ぬ間際に、何故か進化しちゃったよ。進化すると考え方とか感じかたが変わるからねえ。元の場所にも戻れず、一山越えたこっちに落ち着いたのさ」



 このログハウスは、麓の村の木こりや狩人が昔建てたものらしい。勝手に住み着いてるんだとか。村人と遭遇したらどうするんだろ?



「そりゃあ、たっぷりとオモテナシするさぁ。体だってこんなに若返ってピチピチだよぉ。なんとかなるさね」


 バインバインでエチエチだもんねえ……


 とりま、アタシはそういうのいらないや……



 そろそろ日も沈み、その日は、毛皮の上で雑魚寝となった。屋根も暖房もあるし贅沢は言わない。大婆と色々お話しながら、アタシは進化後の初日を終わるのでした。

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