第3部 第14話 月涼の記憶 2
リュートが立ち去った薔薇園で、先ほどの額飾りを思い出す月涼。
『あの額飾り・・・綺麗だったな。さっきの変な人の瞳と同じ色だったけど・・・。ちょっとだけ、素敵だったけど・・・。』
思い出して・・・耳まで赤く染めて、額に落とされた唇の感触を指でなぞってみた。
『ダメダメ!私は、奏を守らなくっちゃ!帰ったら藩の父上に中人にして!って言うんだから。』
そんな決意を胸に刻む月涼だった。
一方、屋敷内では、月涼に会ったリュートがジアン公と話をしていた。
「どうであった?リュート殿下、話を受けてくれるのか?」
「父から聞いたときは、驚きましたので受けるかどうかは、本人と会ってからと言って、こちらに来ましたが・・・。この縁談、喜んでお受け致します。」
この言葉にジアン公は、涙を流して喜びリュートと握手をした。
「そうか。そうか。こうなると信じておった。ありがとう・・・リュート殿下。」
側にいた
「リュート殿下・・・。涼麗は、子供を産めないかも知れないわ。ザンビス陛下がお許しでも・・・ソニア様がお許しになるの?」
「病の方ですね?・・・母も知っています。先ほど、彼女と会って分かった事をお伝えしますね。
そう言うとリュートは、月涼の体内で起こっていることを話した。
月涼の体内に残った毒は、時間は要しても体外に排出されると言う事だった。ただ、心の方に残ったものの方が、病を長引かせていてさらに、生まれ持って、気が陽に傾きすぎている為に、病が悪化していることだった。
気が陰陽のどちらかに極端に傾くことは、双子によく見られる現象でそれ自体は、双子が揃っていれば簡単にバランスを取り戻せるらしい。ところが、月涼の姉は、すでに夭折している。
それぞれの事柄が複雑に絡み、月のものが来ないことや、体形に変化を起こさない状況を作っているのだとリュートは説明した。
「リュート殿下、心のものとは?」
「彼女は、常に不安や恐怖を抱えていますよ。置かれている状況や、目にしてきたもの?でしょうね。環境を変えれば良いのでしょうが・・・今の彼女は、それを拒むでしょう。何やら使命感に駆られているようですし。」
「奏の事ですね・・・。」
「ええ。守ってあげる約束をしていると。クククッ。ですが、彼女のあの気性で、後宮の一妃でいるのは、無理なのでは?幸い、我が青華国には、後宮という制度が有りませんし、一夫一妻制です。これは、王族でもそうです。」
「それは、そうかも知れません・・・が。」
項垂れる
「私は、まだ、12歳の彼女を今すぐ、無理やり連れて行く気等ありません。時が来るのを気長に待ちます。私自身、17歳です。成人まで、まだ少し有ります。(青華国では、18歳で成人である。)国で勉学の途中で、せねば成らないこともかなり有りますので。・・・まぁ、時折様子は、伺うつもりですがね。」
リュートは、この見合い後から西蘭に密偵を潜入させて、月涼の身の保全と動向を報告させており、本人も妓楼に現れる月涼に会いに行っていたが、月涼は気付いていなかった。
「どうだ?思い出したかリュート?」
「いえ・・・これと言って。」
「では、リァンリーの気を探るのにどうした?」
「額に・・・。気が解放される場所なので・・・その、唇を落としました。」
「リァンリーがそれほど愛おしく感じたか?」
耳まで赤くなって、答えるリュート。
「あっ、その・・・まぁ。揶揄わないで下さい母上。」
「フフフ。その時だろうな、お前の気が流れ込んだので有ろう・・・。無の感情で行わなかったからじゃ。気を見るだけなら、手をかざす程度で、分かるだけの力を持っておるのに。まぁ、それが相まって、いろんな局面でも無傷でこれたのであろうが・・・。」
リュートから流れた感情は、奏を見ずに自分を見るようにというもので、方術の様に作用した。だが、その時の月涼には、受け入れられなかったのである。そして、2度目(月涼にとっては)の対面時に額に接吻された際に、それが呼び起こされ、副作用の様なものが起こったのだった。
「まぁ良い。自身で理由が分かったら、リァンリーに、当時の記憶を思い出せるようにしてあげなさい。さすれば、目覚めた時にお前を受け入れられるようになろう・・・。」
話し合いの後、早速部屋に戻り、月涼の様子を確認した。
「藍、リァンリーの様子は?」
「はい。スープを少し飲んで、また、眠ってしまいました。大丈夫なんですか?」
「そうか・・・藍、ペンドラムに言って、温室で咲いている薔薇をできるだけ沢山ここに、持ってきてくれ。リァンリーの記憶を呼び戻す。」
「分かりました!それで、元気になるんですね!?」
「ああ。その予定だ。」
藍は、喜んでペンドラムの所へ向かった。
「ペンドラム様!!ペンドラム様!!リュート殿下が薔薇を集めて、月・・・リァンリー様の部屋に持って来て欲しいと言っています。」
「ふむ。そうか。リァンリー様の治療をなさるのであろう。行きましょう、藍。」
二人が温室に向かい薔薇を集めている間、リュートは、眠る月涼に話しかけていた。
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