神の花嫁

むーこ

序章

都会育ちのCさんは中学2年生の頃、故郷の祭りに参加するという父親にせがんで、生まれて一度も行ったことがなかった父方の田舎を訪れた。

父方の田舎は九州の山奥にあり、外部との交流がほとんど無い為かところどころに因習の名残が残っている。

件の祭りもその名残の一つだ。この村で一番の権力を持つ某家では、何十年かに一度身体に欠損のある男児が生まれる。その男児は村を守る土地神の生まれ変わりとして村外れの御堂で育てられ、成人まで生きると伴侶を宛がわれるのだという。

今年は20年前に生まれた"神の生まれ変わり"が無事に成人を迎えた為伴侶を迎える祭りを行うことになり、他所に出ていった村人を呼び寄せての祭礼を行うのだとか。

昔からの風習のくせに成人年齢は現代に合わせるのか。聞きながらCさんは不思議な気持ちになった。


「初潮を迎えた女の子なら誰でも良いっていうような連中やけんお前を連れて行きたくなかったんやけど、もう嫁さんも決まったみたいやし大丈夫やろ」


要は厄介者を隔離して適当な奴に世話押しつけるってことやからな。Cさんの父親はそう言って嘲笑した。

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