第七百七十五話 マリー・エドワーズは真珠と一緒に『あっち向いてホイ』をやろうとして失敗し、真珠は『スロット』で遊ぶことを思いつく

「そうだっ。『あっち向いてホイ』をしようっ」


「『わっうわううわう』?」


真珠は聞いたことがない言葉に戸惑いながら首を傾げる。

マリーは真珠に『あっち向いてホイ』の説明をするために口を開いた。


「あのね。『あっち向いてホイ』っていうのはじゃんけんをして。……あー。真珠は常に『パー』しか出せないからじゃんけんは無理か……」


「くぅん……」


『じゃんけん』は、真珠にはできないようだ。

マリーの言葉を聞いた真珠は悲しくなって項垂れる。


「じゃあ、じゃんけんは無しにして、私が指示役で真珠が上と下と右と左を向く係にしようっ」


「くぅん?」


「あのね、真珠。私が『あっちむいてホイ』って言った後にこんな風に右とか左とか、上とか下とかを指さすからね」


マリーは真剣な表情で真珠に説明を始め、真珠は肯きながらマリーの話を聞く。


「それでね、真珠は私が『あっちむいてホイ』って言った後に右とか左とか、上とか下とか、好きな方を向いて欲しいの。私がさした指と同じ方向を向いたら真珠の負け。私がさした指と違う方向を向いたら真珠の勝ちだよ。わかった」


真珠は少し考えて肯いた。

真珠が肯いたことを確認して、マリーは口を開く。


「じゃあ、始めるね。あっちむいてホイ!!」


マリーは『あっちむいてホイ』と言った後に『上』を指さした。

真珠はマリーの指が上を向いているのを見て、自分は下を向く。


「真珠。それじゃ遅いのよ。ズルになっちゃう」


「きゅうん……」


どうやら真珠は何か間違えてしまったらしい。

マリーは落ち込んでしまった真珠の頭を撫でながら口を開いた。


「ごめんね、真珠。真珠はまだ小さいから『あっちむいてホイ』は難しかったね」


マリーの外見は5歳の幼女だが、中身は中学一年生だ。

真珠は今年、ポップしたばかりのテイムモンスターで、人間の遊びにはついていけないこともある……。


「どうしよう。暇になっちゃった。何して遊ぶ……?」


マリーの問いかけを聞いた真珠は閃いた!!


「わうっう!!」


顔を上げ、耳をピンと立て、青い目を輝かせて真珠は言う。

真珠の言葉を聞いたマリーは首を傾げて口を開いた。


「わうっう……。えーっと……。あっ!! わかった!! 『スロット』だ!!」


「わんっ!!」


真珠はマリーに自分の言いたいことが伝わって嬉しくて、肯いて尻尾を振る。

マリーは満面の笑みを浮かべて真珠の頭を撫で、口を開いた。


「真珠、ナイスアイディア!! 今、アイテムボックスからスロットマシーンと真珠の椅子を出すねっ。ステータス」


マリーはステータス画面を出現させて収納したスロットマシーンと真珠の椅子を出した。

真珠は『ないすあいでぃあ』の意味がよくわからなかったけれど、大好きな『すろっと』で遊べるのが嬉しかったので気にしないことにした。


***


光月7日 夕方(4時34分)=5月27日 20:34

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