第七百七十二話 5月27日/高橋悠里はシャワーを浴びて髪を乾かし、梳かし終えた後に祖父と話した後にログイン
晩ご飯に鳥そぼろと炒り卵が掛かった丼とイワシの缶詰に大根おろしを掛け、小葱を散らした小鉢に大根の味噌汁を食べて満足した悠里は、キッチンで自分の食器を洗い、それから洗面所で歯を磨く。
今日は『アルカディアオンライン』をプレイする前にお風呂に入ってしまおう。
そして早めにログアウトして寝るのだ。さすがに二日連続で昼休みにガチ寝はしたくない。
歯を磨き終えた悠里は二階の自室に行って学校で使っているノートパソコンを充電し、スマホを手にして明日の7:00にアラームをセットして枕元に置く。
これで明日は寝坊しないはずだ。……たぶん。
ファンタジーVRMMO『アルカディアオンライン』のゲーム機器をベッドの上に準備した悠里はお風呂に入るために、パジャマを持って一階の浴室に向かった。
浴室は家族の誰も使っていない。よかった。
浴槽にお湯を貯める時間がもったいないので、悠里はシャワーを浴びることにした。
手早くシャワーを浴びた悠里は浴室を出て身体を拭き、パジャマを着て、洗面所の鏡を見ながらドライヤーで髪を乾かす。
髪を乾かすたびに、ボブやショートの髪型にしたいと思うけれど、でも髪を乾かし終えてブラシで髪を梳かしているとロングヘアでよかったと思う。
「悠里。もう風呂に入ったのか。今日は早いな」
乾かした髪を梳かし終えた悠里に、トイレから出てきた祖父が言う。
悠里は鏡越しに祖父に微笑んで口を開いた。
「早く『アルカディアオンライン』をプレイしたくて。それでゲームが終わったらすぐ寝れるようにしたかったの」
「そうか。あんまり夜更かしするなよ」
「はあい。お祖父ちゃんは主人公決まった?」
悠里の言葉を聞いた祖父はため息を吐いて口を開いた。
「それが、まだなんだ。スロットっていうのをやってみたんだが、人魚とかでなくてな」
「どんなキャラが出たの?」
「金髪で耳が尖ってる……エルフっていうやつが出た。サポートAIが珍しいキャラだと言ってたから保存はしているんだが」
「エルフ!? すごい!! もしかして『常若の森』っていう場所からスタートする?」
「ああ、確かそんな感じの場所で暮らしてるって書いてあったな」
「すごいー!! あのねえ、たぶん今『常若の森』で世界滅亡系っぽいワールドクエストが発生してるんだよ。お祖父ちゃんがエルフ主人公だったら、そのワールドクエストに参加できるかもね」
「世界滅亡? なんだかすごいことになってるんだな。世界が滅亡したら悠里はゲームで遊べなくなるのか?」
「わかんないけど、滅亡した世界で遊ぶことになるのかなあ……? でもNPCは世界が滅亡したら大変だと思うから、できれば存続させてほしいんだよね」
「わかった。じゃあ、俺はエルフっていう主人公を選んでみるよ。悠里がゲームで楽しく遊び続けられるようにしないとな」
「ありがとう、お祖父ちゃんっ。頑張ってね」
「ああ。じゃあ、ちょっとゲームをやってくる」
祖父はそう言って和室に向かった。
祖父との話を終えた悠里は二階の自室に向かう。
二階の自室に戻った悠里はゲーム機器を置いたベッドに向かった。
それから、ゲーム機とヘッドギアの電源を入れ、ヘッドギアをつける。
そしてベッドに横になり、目を閉じた。
「『アルカディアオンライン』を開始します」
サポートAIの声がした直後、悠里の意識は暗転した。
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