第七百五十六話 マリー・エドワーズたちは先行した真珠を追い、真珠は泣きながらマリーたちの名前を呼ぶ
「でもユリエル様はお風呂入らなくて大丈夫ですか?」
足早にラブリーチェリーの種を埋めた方向に進む真珠と、それを小走りで追うマーキースを視界に入れながら、マリーは自分の隣を歩くユリエルに問いかける。
ユリエルはマリーに視線を向けて口を開いた。
「このバトルが終わったら、領主館に戻ってゲームをやめるから心配しないで」
「時間、結構夜遅かったから、あたし……じゃなくてボクとマリーもこのバトルが終わったらゲームをやめた方がいいかも」
前を歩くマーキースがマリーとユリエルを振り返り、会話に割って入る。
マリーはマーキースに視線を向けて口を開いた。
「マーキースは『転送の間』でサポートAIさんからのアナウンス、聞いた? 私は急いでゲームを始めたかったから、聞かずにログイン来ちゃったんだけど」
「あたし……ボクも『転送の間』のサポートAIのアナウンス、聞かずにゲームを始めたよ。ゲームをやめる時に『転送の間』に寄ってサポートAIに何を言いかけたのか聞いてみる。忘れなければ」
真珠は後方から聞こえるマリーたちの話を聞き流しながら、今度こそはラブリーチェリーの種を埋めた場所にたどり着くと意気込む。
プレイヤーとウッキーモンキーの群れが戦っている場所に到着した。
真珠はプレイヤーの隙間に身体を潜り込ませて前進する。
「あっ。真珠、待って……っ」
真珠の後を追いかけようとしたマリーだが、プレイヤーたちが壁のようになっていて先に進めない。
「マリーちゃん。こっち」
ユリエルは右手に魔銃を、左手でマリーの手を取り、プレイヤーたちの隙間を見つめて歩き出す。
マーキースはマリーを連れて歩くユリエルの後に続いた。
プレイヤーの隙間に身体を潜り込ませて歩き続けた真珠は、戦いの最前列に出た。
ウッキーモンキーやラッキーウッキーモンキーの群れとプレイヤーが戦っている。
ウッキーモンキーやラッキーウッキーモンキーたちはラブリーチェリーの若木の枝に乗っている。
「わんわぅ、わううーわうー!!」
真珠は目の前にあるラブリーチェリーの若木が自分が種を埋めたものだと直感して走り出す。
「なんだ、子犬!?」
「新しいモンスター!? ポップしたの!?」
ウッキーモンキーやラッキーウッキーモンキーの群れと戦っていたプレイヤーたちが、突如現れた『白狼』の真珠……白い子犬にしか見えないのだが、真珠はレアモンスターだ……を見て騒めく。
「真珠!! どこーっ!?」
マリーは必死に真珠の姿を探すが、プレイヤーたちに視界を遮られて探せない。
身長が低い幼女はつらい……。
「ぎゃわああああああああああああああああああああああああああああああああんっ!!」
プレイヤーたちの戦いの音と騒めきを縫って、真珠の泣き声が聞こえる。
「真珠!? 泣いてる……っ!?」
「マリーちゃん、行こうっ」
ユリエルがマリーの手を引いて、プレイヤーの壁をすり抜けて歩き出す。
「わうー!! わうわう!! わーうーう……!!」
真珠が必死にマリーとユリエル、マーキースの名前を呼んでいる。
マーキースはマリーを連れて歩くユリエルの背中を追いながら、真珠は教会にひとりで死に戻ることになるかもしれないと思っていた。
***
光月3日 真夜中(6時45分)=5月26日 22:45
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます