第六百七十八話 マリー・エドワーズが触れたスキル判定オーブが紫色に光り、マリーの錬金術師ギルドのギルド登録料が無料になって喜ぶ
スキル判定オーブの列に並んでいたマリーが列の先頭になり、スキル判定オーブに触れる順番になった。
マリーは緊張した面持ちで、抱っこしている真珠をアーシャに預かってもらう。
受付カウンターに座っている青色のローブを着たNPC女性は、マリーを見て微笑み、口を開いた。
「小柄な方は、踏み台をご利用ください」
「はいっ」
マリーはスキル判定オーブに触れるために踏み台に上る。
そして、緊張しながらスキル判定オーブに触れる。
スキル判定オーブが紫色の光を発した……!!
錬金術師ギルド内がざわつく。
「えっ!? なんで紫!? 青じゃないの!?」
マリーはびっくりしてそう言って、スキル判定オーブから手を離す。
オーブから紫色の光が消え、元の白濁色のオーブに戻った。
「おめでとうございます。スキル判定オーブで『紫色の光』を確認しました。錬金術師ギルドのギルド登録料が無料となります。ぜひ、本日中に登録をお願いします」
「えっ!? 登録料が無料!? ありがとうございます……!!」
マリーは大喜びで踏み台を飛び下りて、ギルド登録カウンターに移動する。
真珠を抱っこしたアーシャがマリーに歩み寄って口を開く。
「マリーちゃん、すごいね!! ウチも紫色の光がよかったなぁ。1000人にひとり、当たりが出るとか?」
「そうなのかなあ? 私、リアルではくじとか全然当たったこと無いから、めちゃくちゃ嬉しい……っ」
「わうーっ。わんわんっ」
「真珠ー!! 金貨10枚が無料だよー!! 嬉しい!!」
マリーはそう言ってアーシャに抱っこされた真珠の頭を撫で、ギルド登録カウンターに移動して踏み台に乗る。
「ギルド登録したいですっ。登録料は無料って言われました!!」
「はい。そのように確認をしています」
受付カウンターに座っている青色のローブを着たNPC男性は、マリーを見て微笑み、そう言う。
マリーの隣に立っていたアーシャが受付のNPC男性に視線を向けて口を開いた。
「あの、なんでマリーちゃんが触ったら、スキル判定オーブが紫色に光ったんですか? 運が関係してるんですか?」
「申し訳ありせんが、その質問にはお答えしかねます。スキル判定オーブが『紫色の光』を発するギルド登録者は、登録作業を終えた後に錬金術師ギルドのギルドマスターに面会していただきます」
「えっ。怖い。何かの実験材料にされるとか……?」
マリーは受付のNPC男性の言葉を聞いて怯えた。
真珠は穏やかな表情を浮かべている男性からマリーを守るべきか戸惑う。
受付のNPC男性は苦笑して口を開いた。
「お嬢さん。実験材料にされることはないですよ。それでは手続きを始めますね」
受付のNPC男性はマリーにギルドカードを差し出す。
薬師ギルド、狩人ギルド、商人ギルドで渡されたカードと同じ物のようだと思いながら、マリーはギルドカードを受け取った。
「カードの右下に四角いマークがあります。その四角のスペースにお嬢さんの親指をぎゅっと押しつけてください」
「はいっ」
マリーは言われた通りにギルドカードの右下にある四角い場所に右手の親指をぎゅっと押しつけた。すると、ギルドカードが淡く光り出す。
何度も見た光景だけれど、何度見ても心がわくわくする。
「無事に登録できたようですね」
受付のNPC男性はマリーの手にあるギルドカードを見て、微笑んだ。
マリーは光がおさまったギルドカードを眺める。
♦
錬金術師ギルド ギルド証
マリー・エドワーズ(女性/5歳)
ギルドポイント 0P
錬金術師ランク G
♦
「それから、こちらの鍵をギルド証に触れさせてください」
受付のNPC男性はマリーの右手と同じくらいの大きさの金色の鍵を差し出した。
マリーは言われるままに、受け取った鍵を自分のギルド証に触れさせる。
鍵が一瞬光り、マリーと真珠は驚いて瞬いた。
アーシャは自分も経験したことなので驚かず、マリーと真珠を温かく見つめる。
受付のNPC男性はマリーを見つめて口を開いた。
「その鍵はお嬢さんの鍵になります。作業室や錬金術師ギルドの寮の鍵穴に差し込んで回してください。鍵をなくした場合は『錬金術師ギルドの鍵・リターン』と言えば……」
受付のNPC男性は自分の右手の手のひらを上に向けてマリーに差し出す。
彼の手のひらには、マリーが持っている鍵と同じ形の鍵があった。
「このように、戻ってきます」
「すごい……!!」
「わうう……!!」
マリーと真珠は鍵が手のひらに戻ってくる仕様に感動した。
受付のNPC男性はマリーと真珠を見つめて微笑み、口を開く。
「但し、戻ってくるのは鍵だけです。ギルド証を失くすと再発行に手数料金貨10枚を頂きます。ご了承ください」
「なんでギルド証は戻ってこないの? 『錬金術師ギルドのギルド証・リターン』って言ったら戻ってきたりしないの?」
「くぅん?」
「ウチもそれ、気になる」
マリーと真珠、アーシャが口々に言うと、受付のNPC男性は困った顔で口を開いた。
「ギルド証は『知と探求の神ノヴァ』から賜った神の遺物で、各ギルドのギルドマスターの部屋に備え付けられた金庫に、減った数だけ補充される仕組みになっています。『錬金術師ギルドの鍵』は三代前の錬金術師ギルドのギルドマスターが開発した物なので、仕様が違うのです」
「へえー。神様が作った物より人間が作った物の方が性能いいんだ。不思議」
アーシャがそう言うと、受付のNPC男性は困ったような、嬉しそうな顔で口を開く。
「聖人の方は神罰を恐れないのかもしれませんが、神々を侮辱する言葉は控えられた方が賢明かと。ですが、人間の歩みと知恵を評価していただけたことは嬉しく思います。これで手続きはすべて完了しました。今、青色のローブをお持ちしますね」
「はいっ!!」
受付のNPC男性は席を立ち、マリーはわくわくしながら自分の青色のローブが貰えるのを待った。
***
風月21日 昼(3時08分)=5月23日 19:08
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