アルカディアオンライン【高橋悠里 中学一年生・一学期終了編】
第五百六十七話 マリー・エドワーズと真珠は情報屋の『ルーム』で目覚め、マリーの固有クエスト『塩を安価に、庶民の手に!!』の情報の対価にこの世界の塩の流通等の情報を要求する
第五百六十七話 マリー・エドワーズと真珠は情報屋の『ルーム』で目覚め、マリーの固有クエスト『塩を安価に、庶民の手に!!』の情報の対価にこの世界の塩の流通等の情報を要求する
マリーは情報屋の『ルーム』内で目覚めた。
皮張りのソファーの背にもたれて眠っていたようだ。
マリーの膝に頭を乗せて寝ていた真珠も目覚めた。
真珠が遊んでいた光るビー玉と手鏡はテーブルの上に置かれている。
重厚な机の上に置かれたノートパソコンで作業していた情報屋は、パソコンのキーボードを叩く手を止めて、目覚めたマリーと真珠に視線を向けた。
「マリーさん。真珠くん。目が覚めたようですね」
「情報屋さん。強制ログアウトしちゃってごめんなさい」
「わわんわわう」
マリーと真珠は揃って情報屋に頭を下げる。
情報屋はマリーと真珠に微笑み、口を開いた。
「いいんですよ。そろそろ晩ご飯の時間でしょうから。私もワールドクエスト『ヘヴン島の女王 ヘヴン島の覇権をめぐる攻防』のクエスト関連の情報収集と整理が一段落したらログアウトしようと思っています」
「じゃあ、私と真珠は『ルーム』を出ますね。情報屋さんの邪魔をしたらダメだと思うし……」
「くぅん……」
「でも、まだマリーさんの固有クエストの情報を教えて頂いていないですよね。ぜひ、情報を売ってください。マリーさんの固有クエストは興味深い深いものがあるので期待しています。今、手帳と万年筆を持ってそちらに移動しますね」
情報屋はそう言って黒革の手帳と万年筆を持って席を立ち、マリーと真珠が座っている向かい側のソファーに座った。
マリーはノートパソコンと黒革の手帳を見比べて口を開く。
「情報屋さん。黒革の手帳に万年筆で情報を書き取るより、ノートパソコンで書いた方が便利じゃないですか? これって前にも言いましたっけ?」
「様々な顧客から同様のことを言われますが、情報屋ロールには黒革の手帳が欠かせない物だと思っていますので、このスタイルを変えるつもりはありません」
「そっか。ゲームだから楽しんだ方がいいですよね」
「ええ。マリーさんの仰る通りです」
マリーと情報屋のやり取りを聞いていた真珠は『楽しんだ方がいい』という言葉に共感して肯く。
情報屋はテーブルの上で黒革の手帳を開き、マリーは情報を販売し終えた後、すぐに情報屋の『ルーム』から出られるように、テーブルの上に置かれている光るビー玉と手鏡を左腕の腕輪に触れさせてアイテムボックスに収納した。
右手に万年筆を持ち、情報屋はマリーに視線を向けて口を開く。
「ではマリーさん。情報をお願いします」
「はいっ。じゃあ、私の新しい固有クエストを読み上げますね。ステータス」
マリーはステータス画面を出現させて、固有クエスト『塩を安価に、庶民の手に!!』のクエスト内容を表示させ、読み上げた。
情報屋はマリーの言葉を黒革の手帳に書きとめ、真珠は興味深げに肯きながら聞いている。
「以上ですっ。クローズ」
固有クエスト『塩を安価に、庶民の手に!!』のクエスト内容を表示させて読み終えたマリーはステータス画面を消して口を閉ざし、黒革の手帳に情報を記載している情報屋の邪魔をしないように静かにしている。
真珠もマリーに倣っておとなしく座っている。
情報屋はマリーから聞いた情報を全て記載して、手にしていた万年筆をテーブルの上に置いた。
「マリーさんの固有クエスト『塩を安価に、庶民の手に!!』は面白いですね。私もこの機会にこの世界の塩の流通等について調べてみようと思います」
「本当ですかっ!? じゃあ、私の固有クエスト『塩を安価に、庶民の手に!!』の対価は、情報屋さんが調べたこの世界の塩の流通等の情報でお願いしますっ」
「趣味で調べることなので、いつ情報をお渡しできるかわかりませんが、それでも宜しいですか?」
「よろしいですっ」
マリーは情報屋の目をまっすぐに見つめて力強く肯く。
マリーの固有クエスト『塩を安価に、庶民の手に!!』の達成条件はアバウトすぎる上に、クエスト達成の期限が無いのでのんびりと構えていられる。
マリーと情報屋の話し合いが終わった直後にマリーと情報屋それぞれに、フレンドからのメッセージが届いた。
マリーは情報屋の『ルーム』から出てメッセージを確認するか、情報屋の『ルーム』に留まってメッセージを確認するか迷い、ステータス画面を出現させ、虚空を凝視している情報屋に視線を向ける。
「情報屋さん。私もここでフレンドからのメッセージを確認してもいいですか?」
「構いませんよ。おそらくマリーさんに届いたメッセージは私に届いたメッセージと同じなのではないかと思います」
情報屋の許可を得たマリーは真珠に視線を向けて口を開いた。
「真珠。今、フレンドからのメッセージを確認するからちょっとだけ待っててね」
「わんっ」
真珠はマリーの言葉に肯いた。
***
風月13日 昼(3時20分)=5月21日 19:20
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます