第五百七話 高橋悠里はリビングで祖父と話し、祖父に『アルカディアオンライン』をすすめる



「お祖父ちゃん。お祖母ちゃんとお母さんに花をプレゼントしてくれたかな? 見に行こう。ついでにトイレにも行こう」


悠里はスマホをベッドの上に置いて部屋を出た。


一階に行き、トイレに行ってからリビングに行くと、祖父がソファーに座ってテレビを見ていた。

相変わらず、新型コロナと東京オリンピックの話題が流れている。

祖母と母親の姿は無い。

悠里は祖父の隣に座って口を開いた。


「お祖父ちゃん。お祖母ちゃんとお母さんに花をプレゼントした?」


祖父は悠里に微笑み、口を開く。


「したぞ。お祖母ちゃんには白くてくるくる巻いている花の花束を渡して、お母さんにはカーネーションが入った花束を渡しておいた。ちゃんと悠里からだと言っておいたぞ。二人とも喜んで、今、花瓶を探してるよ」


「白くてくるくる巻いている花……。謎だね」


「俺は花の名前はわからないからな。でも、お祖母ちゃんがその花を好きなことは知ってる」


祖父はそう言って口元を緩めた。

祖父は祖母のことが大好きだ。

祖母には重い荷物を絶対に持たせないし、意外と祖父が祖母のことをよく見ていることを悠里は知っている。

悠里はそんな祖父と祖母が大好きだ。

悠里が祖父を見つめてにこにこしていると、祖父が悠里に心配そうな視線を向けて口を開いた。


「でも、あんなに高そうな花、二つも用意して大丈夫なのか? 小遣いが足りないなら、いくらかやるぞ。お母さんには内緒だ」


祖父は祖母だけでなく悠里にも優しい。


「大丈夫だよ。あの花はゲームで貰えるポイントで交換したの。実質、無料なんだよ」


悠里は祖父に説明したが、祖父は首を傾げている。

悠里が言葉を尽くして頑張って説明して、10分が経過した。

悠里の説明を聞き終え、神妙な顔で祖父が口を開く。


「なんだかよくわからんが、無料で花が貰えたということだけはわかった」


「うん。もうそれでいいよ……」


悠里は力尽きて、ソファの背もたれに背中を預けた。

祖父はぐでっとしている悠里を見つめて口を開く。


「でも、悠里が遊んでいるゲームはすごいもんだな。コロナ禍で景気も良くないのに、無料であんなに高そうな花をくれるなんて」


「おじいちゃんも『アルカディアオンライン』で遊ぶ? 通帳を貸してくれたら、私、ゲーム機器の申し込みを代行するよ」


「ゲームで遊ぶのに、通帳が必要なのか?」


悠里の言葉を聞いた祖父は眉間にしわを寄せた。

祖父に説明するには自分の力が足りないことを痛感した悠里はソファーから立ち上がる。


「今、私のスマホを持ってくるからちょっと待ってて。お祖父ちゃん自身が『アルカディアオンライン』の規約とか確認した方がいいと思う」


悠里はそう言ってソファーから立ち上がり、リビングを出て二階の自室に向かった。





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