第四百五十話 マリー・エドワーズは『識別の虫眼鏡』で真珠を見て、高橋悠里は転送の間でサポートAIにクレームを入れる



マリーは『赤い珊瑚亭』の105号室のベッドの上で目覚めた。


「わうー。わううぅ」


目覚めた真珠がマリーにすり寄る。可愛い。


「おはよう。真珠」


マリーは真珠を優しく撫でてぎゅっと抱きしめた。

マリーに抱きしめられた真珠は嬉しそうに青い目を細めて尻尾を振る。


「わうー。わうわうわ?」


真珠は眠っているユリエルに視線を向けて首を傾げて問いかける。


「ユリエル様はまだ起きないよ。たぶん一時間後くらいには起きると思う」


「くぅん?」


真珠は『いちじかんご』が何なのかわからなくて、マリーを見つめて首を傾げる。


「今、ゲーム内の時間って何時なんだろう? やっぱり時計は必要かなあ。時計があれば真珠に『一時間後』を説明できるのに……」


マリーはため息を吐いて呟く。

真珠はマリーが困っているのを見てしゅんとした。

マリーは真珠が項垂れていることに気づいて彼の頭を優しく撫でながら考える。

真珠と一緒に楽しめること、何かないかな……?

マリーは真珠と遊ぶ方法を考えて、そして『識別の虫眼鏡』で遊ぶことを思いつく。


「真珠。『識別の虫眼鏡』で一緒に遊ぼう」


「わんっ」


真珠はマリーの言葉に肯いて尻尾を振った。


「ステータス」


マリーはステータス画面を出現させてアイテムボックスから『識別の虫眼鏡』を取り出して手に取る。


「真珠。まずは私が真珠を虫眼鏡で見るね。バグ報告したから、きっと『真珠(可愛くてかっこいいテイムモンスター)』って記載されてると思うんだ」


「わんっ」


真珠は『可愛くてかっこいいテイムモンスター』の誇りをもって、お座りをして胸を張る。

マリーは『識別の虫眼鏡』を真珠に翳してレンズを覗き込んだ。

『真珠(テイムモンスター。可愛い)』と記載されている……。

マリーは首を傾げた。


「真珠。なんかちょっと記載が間違ってるから、私ちょっとサポートAIさんに報告してくるね。待っててね」


「わんっ」


真珠はマリーの言葉に肯く。

マリーは真珠の頭を撫でてリープした。


気がつくと、悠里は転送の間にいた。


「サポートAIさんっ。私がバグ報告したこと、間違って修正されてるんですけど……」


「高橋悠里様。確認しますのでバグ報告の内容と修正された内容を教えてください」


「わかりました」


悠里はテイムモンスターの真珠の説明が『真珠(可愛くてかっこいいテイムモンスター)』ではなく『真珠(テイムモンスター。可愛い)』と記載されていると話した。


「確認します。確認中……。確認終了。『アルカディアオンライン』ゲーム制作スタッフは現状の真珠は『可愛い』が適当であり『かっこいい』には当たらないと判断したようです」


「横暴です!! 真珠は可愛くてかっこいいよ!! 異議あり!!」


「高橋悠里様のクレームを送信中……。送信完了しました。返信はしばらくお待ちください」


「サポートAIさんもゲーム制作スタッフさんにちゃんと言ってね。真珠は可愛くてかっこいいんだって」


「種族レベル4の子犬グラフィックのテイムモンスターは『可愛い』が妥当だと思われます」


「サポートAIさんが厳しい……。でもゲーム制作スタッフさんは真珠のかっこよさに気づいてくれるかもしれないしっ」


悠里はそう言って肯く。


「じゃあ、私、ゲームをプレイしますね」


「それでは、素敵なゲームライフをお送りください」


サポートAIの声に送られ、悠里は鏡の中に入っていった。



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