第二百五十六話 マリー・エドワーズはログアウトして高橋悠里は自分と幼なじみの彼女とサックスパートの皆の分のマスクケースを用意する
マリーと真珠はベッドがある部屋に入る。
父親も母親も働いているので、部屋には誰もいなかった。
マリーが真珠を抱き上げようとすると、真珠は後ずさりする。
「真珠。今日は足を拭くものがないからそのままベッドに行こうね。私、早くログアウトしないと明日、寝坊しちゃうかもしれないの」
「くぅん……。……わん」
真珠は足が汚れたままベッドに乗るのは嫌だったが、マリーが困った顔をしたので、渋々肯く。
マリーは真珠を抱っこしてベッドに歩み寄り、真珠をベッドの上に寝かせた。
「寝巻に着替えるのは……うん。無理」
大切なワンピースドレスが皺になるのは悲しいけれど、ひとりで着替えられそうにない。
マリーは白いパンプスを脱いでワンピースドレスのまま、真珠の隣に寝転がる。
とにかく早くログアウトしないと。そしてゲーム機器を片づけて、スマホのアラームをセットして、明日の授業の準備をして寝るのだ。
「真珠。起きたら私に真珠のモンスター討伐のことを聞かせてね」
「わんわんっ。わうー」
「じゃあ、寝ようね。おやすみ。真珠」
「わうわお。わうー」
マリーと真珠は隣同士で寝ころび、微笑みを交わして目を閉じる。
そしてマリーは口を開いた。
「ログアウト」
マリーの意識は暗転した。
悠里が目を開けると、部屋は明るかった。
部屋の電気をつけてゲームをプレイしていたから部屋が明るいのだと思いながら、瞬く。
「今、何時だろう……?」
悠里はそう言いながら横たわっていたベッドから起き上がり、ヘッドギアを外した。
そしてヘッドギアとゲーム機の電源を切る。
それからヘッドギアとゲーム機をつなぐコードを外した。
「明日もゲームで遊びたいからヘッドギアとゲーム機を充電しておこう」
悠里はヘッドギアとゲーム機を充電した後、迷った末にコードを机の上に置いた。
明日……もしかしたらすでに日付が変わっていて今日かもしれないけれど……学校から帰ったらすぐに遊ぶのだから、ゲーム機器が入っていた段ボール箱にしまうより、机の上に置きっぱなしにした方がいい。
「時間、確認しよう」
悠里はコードを机の上に置いた後、スマホを手にした。
「うわあ。日付が変わってる……っ」
今の時間は5月10日の1:12だ。
悠里は急いで明日の……ではなく今日の学校の準備を始めた。
「そうだ。マスクケースも持っていこう。私とはるちゃんが使う用と、それから……」
給食を食べる時に使う分と部活に使う分……部活に使う分は悠里と晴菜の分だけでなく、要の分も用意したい。
「でも藤ヶ谷先輩にだけマスクケースを渡すのはよくないよね。相原くんにも、篠崎先輩にも渡した方がいいよね……?」
悠里はそう考えて、いつも自分に意地悪なことを言う三年生の先輩、美羽の分も用意することに決めた。
自分だったら、ひとりだけマスクケースを貰えなかったら嫌な気持ちになると思ったからだ。
「そういえば佐々木先輩って、鞄に『リボンねこ』のキーホルダーをつけてた気がする……」
『リボンねこ』は白猫で首にピンクのリボンをつけているロングセラーのキャラクターで、悠里の母親が少女だった頃からずっと存在しているらしい。
悠里は特に『リボンねこ』のことが好きでも嫌いでもないがお菓子メーカーと『リボンねこ』がコラボした『リボンねこクッキー』はおいしいのでたまに買う。
悠里は祖母や母親と一緒に作ったマスクケースの中に『リボンねこ』が描かれた包装紙を切って作ったマスクケースがあったことを思い出した。
「佐々木先輩……『リボンねこ』のマスクケースなら受け取ってくれるかなあ……?」
悠里は不安に思ったが、今ここでグダグダ考えていても仕方がないと割り切る。
そしてマスクケースを鞄に入れてスマホのアラームを6:45にセットして枕の脇に置いた。
それから部屋の電気を消してベッドに横になる。
「おやすみなさい……」
悠里はすぐに眠りに落ちて、明日きちんと目覚められるようにと願いながら目を閉じた。
***
若葉月26日 昼(3時34分)=5月10日 1:34
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