第二百六話 5月9日/迷った末に真夜中にログイン



要と晴菜へのメッセージを送信し終えた悠里は、迷った末に『アルカディアオンライン』を少しだけプレイすることにした。

転送の間で5月9日分の換金をしておこうと考えたのだ。

悠里はゲーム機器が入っていた段ボール箱からコードを取り出す。

それから充電しているヘッドギアとゲーム機を充電器から取り外してコードでつないだ。

ゲーム機とヘッドギアの電源を入れ、ヘッドギアをつけた。

パジャマ姿のままベッドに横になり、目を閉じる。


「『アルカディアオンライン』を開始します」


サポートAIの声がした直後、悠里の意識は暗転した。


気がつくと、悠里は転送の間に立っていた。

今の悠里はゲームを始める前と同じ、パジャマ姿だ。


「プレイヤーの意識の定着を確認しました。『アルカディアオンライン』転送の間へようこそ。プレイヤーNO178549。高橋悠里様。アイテムボックスにワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』のキーアイテム『招待状』が届いています。ゲーム開始後にご確認ください。ワールドクエスト『狼王襲来・港町アヴィラ攻防戦』のPVが完成しました。5月9日の11:00から公式サイト並びに公式SNSより配信が開始されます。マリー・エドワーズが『名シーン賞』を受賞したため、ゲーム内通貨10000リズを贈呈します。『アルカディアオンライン・プロジェクト』からのお知らせがあります。お伝えしても宜しいですか?」


「待って待って待って!! 情報量が多すぎる……っ」


サポートAIのアナウンスを聞いた悠里は混乱した。

聞いた情報を自分の中で消化するために、口に出して確認しよう。


「ええと、まずは『アイテムボックスにワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』のキーアイテム『招待状』が届いています。ゲーム開始後にご確認ください』ですよね?」


「左様です。アイテムボックス一覧は転送の間でもご確認いただけますが、アイテムボックスのものを転送の間で取り出すことはできません。こちらはゲームの仕様となります」


「わかりました。この情報って情報屋さんに売れると思いますか?」


「その質問にはお答えしかねます」


悠里の今の質問はダメだったようだ。

それも含めて、情報屋に情報を売ってみようと悠里は思う。

マリーの借金返済クエストは達成されたけれど『銀のうさぎ亭』のメシマズ事情は改善されていない。

領主館で食べさせてもらったパンケーキを『銀のうさぎ亭』の食堂で出せればきっとマリーの家族やお客様にも喜んでもらえるしマリーと真珠も嬉しい。

高級食材の砂糖や油、まだ見たことがない卵を入手するためにも資金は必要だ。

今後とも売れそうな情報は全部、情報屋に売っていきたい。

悠里は次の情報を確認することにした。




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