第百九十二話 マリー・エドワーズは固有クエスト『権利書を買い戻せ!!』の内容が変更されていることに驚く



マリーは『固有クエスト』の部分に触れた。

新たな画面が表示される。

マリー・エドワーズの『固有クエスト』の名称一覧が表示され、マリーは【NEW】がついている『権利書を買い戻せ!!』をタップした。

新たな画面が表示される。





クエスト名 権利書を買い戻せ!!→ 権利書を取り戻せ!!【NEW】【強制受注】


ウォーレン商会の手に渡ってしまった『銀のうさぎ亭』の土地と建物の権利書を買い戻そう。


→クエスト内容変更:ウォーレン商会の手に渡ってしまった『銀のうさぎ亭』の土地と建物の権利書を取り戻そう。





「えっ!? 『クエスト内容変更』ってなってる……っ!! クエストの名前も変わってる!!」


ステータス画面はそのプレイヤー本人にしか見えず、内容は本人とサポートAIしか確認できない。

ルーム内にいるマリー以外の全員が、虚空を凝視しているマリーの邪魔をしないように静かにマリーを見守っていたが、マリーの叫び声を聞いてそれぞれに口を開いた。


「やはり、そうですか」


「キャラ固有クエストの名前とかクエストの内容って変更されることがあるんだなっ。なんかちょっとワクワクするなっ」


納得したように肯いたのは情報屋で、クレムは目を輝かせてワクワクしている。


「俺はまだ何のクエストも受けていないから、初クエストが楽しみだな」


「わんわんっ」


ユリエルの言葉を聞いた真珠は、ユリエルのクエストはマリーのようにお金を集める大変なものじゃなくて、楽しいものだったらいいなあと思いながら尻尾を振った。

マリーは『クエスト達成条件』に目を通す。





クエスト達成条件


①若葉月30日までにウォーレン商会の会頭アーウィン・ウォーレンに10000000リズを渡す。


②若葉月30日までにウォーレン商会の会頭アーウィン・ウォーレンの詐欺行為を暴く。





「『クエスト達成条件』が増えてる……っ」


目の前の画面を凝視しながら言うマリーを見つめて、情報屋は口を開いた。


「マリーさん。固有クエストの変更点と変更された内容について教えて頂けますか? 対価をお支払いしますので」


「え? あ、はいっ」


マリーは若干混乱しながらも丁寧に画面を目で追い、口を開いた。


「まず、変更されているのは『固有クエスト』の名前です。以前は『権利書を買い戻せ!!』だったんですけど今は『権利書を取り戻せ!!』になってます」


「なんか、微妙な変更だな『買い戻せ!!』と『取り戻せ!!』が違うだけ?」


マリーの言葉を聞いたクレムは首を傾げる。


「とりあえず、マリーちゃんの話を聞こう」


ユリエルの言葉にクレムと真珠は肯いた。


「えっと、クエスト内容が『ウォーレン商会の手に渡ってしまった『銀のうさぎ亭』の土地と建物の権利書を買い戻そう』から『ウォーレン商会の手に渡ってしまった『銀のうさぎ亭』の土地と建物の権利書を取り戻そう』になってます」


マリーは情報屋に説明する。


「クエスト達成条件はどうなりましたか?」


情報屋に問いかけられてマリーは口を開いた。


「クエスト達成条件が二つに増えてます。一つは前のままで『若葉月30日までにウォーレン商会の会頭アーウィン・ウォーレンに10000000リズを渡す』なんですけどもう一つ条件が増えてて」


マリーの言葉にマリー以外の全員が注目する。真珠は耳をピンと立てて、マリーの言葉を待った。


「えっと、もう一つの条件は『若葉月30日までにウォーレン商会の会頭アーウィン・ウォーレンの詐欺行為を暴く』になってます」


マリーの言葉を聞いたクレムは顔をしかめて口を開く。


「うわあ。特殊詐欺とかガンガンあるリアルだけじゃなく、ゲームでも詐欺とか……」


「マリーちゃんがお父様やフレデリックお兄様に必死に訴えなければ詐欺を仕掛けてきた相手に10000000リズを支払うところだったのか」


「うううう……っ」


ユリエルの言葉を聞いた真珠は、マリーとマリーの家族に悪いことをしたウォーレン商会に腹を立てて唸る。

マリーは真珠を宥めるように、真珠の身体を優しく撫でた。

真珠はマリーの優しい手の感触に少し落ち着き、唸るのをやめる。

情報屋はマリーの言葉を手帳に書きとめている。


***


若葉月22日 早朝(1時37分)=5月8日 16:37



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