第百三十二話 マリー・エドワーズと真珠は情報屋がスキル『隠蔽』を創造するのを見守り、情報屋からの依頼を受ける
「『鑑定』スキルを隠蔽するスキルが欲しいです。たとえば、望んだスキルだけを隠蔽できるようなものがいい」
情報屋は緊張した面持ちで、創造したいスキルを口にした。
マリーと真珠はサポートAIの声が響くのを固唾をのんで、待つ。
「デヴィット・ミラーがスキルの創造に成功しました。スキル『隠蔽』を習得しました。これ以後、プレイヤーはスキル習得画面で『隠蔽』を習得できます」
「やったあ!!」
「わっわう!!」
サポートAIのアナウンスを聞いてマリーと真珠が大喜びした。情報屋は頬を緩める。
「どんなスキルなんだろう? 『隠ぺい』って。調べてみよう。ステータス」
マリーはステータス画面の『スキル習得』をタップして『隠ぺい』で検索をする。
「あ。出た。『隠蔽』だって。ぺいって難しい字を書くんだね……」
「くぅん……」
「ごめんね。真珠はステータス画面、見えないよね。私が読み上げるから、ちょっと待ってて」
マリーは『隠蔽』の説明を表示させた。
♦
隠蔽【習得要SP100/未習得】
コモンスキル/魔法スキル。
このスキルが発動している間は隠したい情報を隠し続けることができる。
レベル1の時、MPを10消費/10文字までの情報を10分間隠蔽することができる。
レベルが1上がるたびにMP消費が10ずつ増える/隠せる文字が10文字ずつ増え、隠蔽できる時間が10分ずつ増える。
使用する時には「魔力操作ON」「隠蔽ON」と言ってから隠したい情報を読み上げる。
終了する時には「魔力操作OFF」と言う。
MPが0になると自動的に解除される。
条件を満たしていない場合は『隠蔽に失敗しました』と表示される。
『鑑定』スキルの熟練者は『隠蔽』された情報を看破することができる。
♦
「真珠。今から『隠蔽』スキルの説明文を読み上げるからね」
「わんっ」
マリーは目の前に表示されている『隠蔽』スキルの説明文を読み上げた。
真珠は真剣にマリーの言葉を聞いている。
『隠蔽』スキルの説明文を読み終えたマリーは真珠の頭を撫でた後、情報屋に視線を向けた。
「なんか、最後の一文は間違いっぽくないですか?」
「『『鑑定』スキルの熟練者は『隠蔽』された情報を看破することができる』という一文ですね」
「はい。『鑑定』スキルはレアスキルでスキルレベルはないですよね? だったら『熟練』もなにもないと思うんですけど……」
「私は『鑑定』スキルにはなんらかの秘密があると考えています」
情報屋はそう言って、テーブルの上にあるガラス玉を手に取った。
「それを知りたくてマリーさんに依頼しようと思ったのです。このガラス玉を鑑定師ギルドの副ギルドマスターに鑑定してもらって、その内容を私に教えてもらえませんか?」
「情報屋さんが『隠蔽』を使っても鑑定師の『鑑定』で見破られちゃうかもしれないから、私と真珠で行った方がいいですよね。わかりました。その依頼を前金、金貨20枚でお受けしますっ!!」
マリーは胸を叩いて情報屋の依頼を引き受けた。
真珠はそんなマリーを不安げに見つめる。
「ではよろしくお願いします。マリーさん。真珠くん」
情報屋は金貨20枚とガラス玉をマリーに渡して言う。
マリーは情報屋から金貨20枚とガラス玉を受け取った後、アイテムボックスに収納して立ち上がり、真珠を床に下ろした。
『ルーム』を出て領主館に向かおう。
***
マリー・エドワーズが依頼の前金として受け取った対価 金貨20枚
※金貨20枚は依頼をこなす際にかかる費用も含む金額
若葉月14日 夜(5時35分)=5月6日 20:35
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