第百三十話 マリー・エドワーズと真珠は狩人ギルドの寮の一室で目覚める



目が覚めると暗かった。今は夜だろうか。


「わうー」


「おはよう。真珠」


マリーはお気に入りのワンピースを着たまま狭いベッドに横たわっている。

隣に真珠がいて、ほっとした。

ここはウェインが連れて来てくれた狩人ギルドの寮だろうか。

マリーは手のひらを上に向けて口を開いた。


「魔力操作ON。ライトON」


マリーの手のひらの上に小さくて淡い光の玉が出現した。

ベッドしかない狭い部屋だ。

光が床に転がっているウェインを照らし出す。


「えっ!? ウェイン……っ!?」


マリーと真珠はウェインに近づき、マリーは彼の身体を揺すった。

だがウェインは目覚めない。


「もしかしてログアウトしたの? とにかくベッドに運ぼう」


「わんっ」


マリーと真珠はウェインの身体を動かそうとしたができなかった。


「私のSTR値だとウェインを動かせない……っ」


「くぅん……」


マリーと真珠はウェインをベッドに寝かせることを諦めた。

ウェインの頭の下に枕を入れて身体に薄布をかける。


「もしかして、私にウェインの部屋を使わせてくれたのかな?」


マリーの狩人ギルドのギルドカードはアイテムボックスにしまったままだから、もしかしたら部屋を借りることができなかったのかもしれない。

マリーはフレンド機能でウェインにお礼のメッセージを送信した。リアルでも圭にお礼を言おうと悠里は思う。


「これからどうしようか。真珠」


マリーが真珠に問いかけたその時、可愛らしいハープの音が鳴った。

マリーはフレンド機能でメッセージを確認する。


「情報屋さんからのメッセージだ。『今、ルームにいます。会えそうなら連絡をください』だって。真珠。情報屋さんに会いに行こうね」


「わんっ」


マリーは情報屋に『今、ログインしました。これから教会に行きますね』というメッセージを送信した。


「真珠。これから『ライト』を使って教会に死に戻るね」


「わんっ」


「魔力操作ON。ライトON。ライトON」


マリーは次々に光の玉を増やしていき、そして魔力枯渇になって死んだ。


気がつくと、マリーは教会にいた。真珠も一緒だ。


「もう『ルーム』に行っても大丈夫なのかな?」


「くぅん?」


マリーと真珠が顔を見合わせて首を傾げていると可愛らしいハープの音が鳴った。


「情報屋さんからのメッセージかもっ」


「わんっ」


マリーはフレンド機能でメッセージを確認する。


「やっぱり情報屋さんからのメッセージだった。『ルーム』に来てほしいって。クローズ」


マリーは画面を消して真珠に微笑む。


「真珠。フローラ・カフェに行こうね」


「わんっ」


マリーと真珠は連れ立ってフローラ・カフェに向かった。


***


若葉月14日 夜(5時11分)=5月6日 20:11

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