第百十一話 高橋悠里は『クリーン』のメリットとデメリットについて考察する



悠里はステータス画面の『スキル習得』をタップして『クリーン』を検索をする。


「『クリーン』あった」


悠里は『クリーン』の説明を表示させた。





クリーン【習得要SP1000/未習得】



コモンスキル/魔法スキル。

手のひらをかざしたところを中心にゴミ/埃/汚れ/毒/猛毒/ウィルスを除去する。

除去されたものは消滅する。

身体の表面にあるものは除去できるが体内に入ったものは除去できない。


レベル1の時、MPを10消費/一辺が10cmの、手のひらを中心とした四角いスペースに有効。

レベルが上がるたびににMP消費が10ずつ増え、有効範囲の一辺が10cmずつ長くなる。


使用する時にはクリーンをかけたい対象に手のひらをかざして「魔力操作ON」「クリーンON」と言う。終了する時には「クリーンOFF」か「魔力操作OFF」と言う。

「クリーンOFF」の場合は魔力操作は継続となる。

MPが0になると自動的に解除される。




【習得する/習得しない】





「習得要SP1000!? サポートAIさんっ!! バグってますよ……!!」


「バグではありません。仕様です」


「いやいやいやいやいや、おかしいでしょ!? だって『クリーン』ですよ!? 生活密着魔法じゃないですか……っ!?」


「スキル『クリーン』を創作したゲームスタッフとスキル『掃除』を創作したゲームスタッフは同期で仲が良く、スキル『クリーン』を取るプレイヤーが増えるとスキル『掃除』が死にスキルになる可能性があると話し合い、このような仕様になりました」


「確かにそうだと思うし、仲良しなのはいいことですけど……っ」


悠里は肩を落として項垂れる。

『クリーン』があればいつでも真珠の足を綺麗にしてあげられると思ったのに……っ。


「元気を出してください。高橋悠里様。『クリーン』にもデメリットがあるのです。『掃除』スキルの方が優れている点があります」


サポートAIの言葉に励まされた悠里は顔を上げた。


「サポートAIさん。『クリーン』のデメリットってなんですか?」


「高橋悠里様。『クリーン』の説明文をもう一度読んでみてください」


サポートAIに促されて悠里は表示されている『クリーン』の説明文に目を通す。


「『クリーン』のデメリットに気づきましたか?」


「デメリットは習得するのにスキルポイントが1000も必要なことです……」


「それ以外でなにか気づきましたか?」


「わかりません。『クリーン』は毒とかウィルスも除去できて『掃除』よりすごいと思います」


「高橋悠里様は今、正解を口にしましたよ」


「え……?」


「『クリーン』の説明文をもう一度読んでみてください」


悠里はサポートAIに促され、もう一度、説明文を読み直す。


「あ……!!」


悠里は『除去されたものは消滅する』という一文に気づいて声をあげる。


「『クリーン』をかけると有効範囲のゴミとかは消えてしまって、ガラスの欠片等のゴミ判定されたアイテムを拾えなくなるっていうことですか!?」


「正解です」


「それはデメリットだと思います!!」


「そうですね。クリーンの『除去されたものは消滅する』という効果はデメリットでもあり、メリットでもあります。不必要なゴミ等ならば消滅した方が良いでしょう」


「そうですね。そう思います」


悠里がサポートAIの言葉に深く肯いた直後、可愛らしいハープの音が鳴った。

メッセージが来たようだ。

悠里はメッセージを確認した。


「情報屋さんから返信が来ました。これから会ってくれるそうです。だから私、行きますね」


「それでは、素敵なゲームライフをお送りください」


サポートAIの声に送られ、悠里は鏡の中に入っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る