【ゲーム内の暦と主人公マリーの誕生日】第二十三話 マリー・エドワーズは固有クエスト発生に驚く
マリーの目の前に、悠里の行動履歴が現れた。
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高橋悠里の行動履歴
5月3日
初ログインボーナス スキルポイント5入手
マリー・エドワーズに憑依。
マリー・エドワーズのHP全回復
マリー・エドワーズの状態異常回復
マリー・エドワーズが不滅の腕輪を入手
ユニークスキル アイテムボックス入手
ステータス アイテムボックス解放
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「スキルポイントが貰えたのは初ログインボーナスだけみたい」
マリーは少しがっかりした。
「クローズ」
行動履歴の確認を終えたマリーは、画面を消した。
ステータス画面の確認は終わったし、部屋の外に出てみようかな。
マリーがそう思い立ったその時、部屋の外から足音が近づいてきた。
「寝たふり、寝たふりをしないと……っ」
マリーは慌ててベッドの中に潜り込み、目を閉じる。
扉が静かに開く音が聞こえた。
「マリーは寝ているようだな」
「ええ。穏やかな顔つきです。本当に元気になってよかった」
両親の声ではない、男女の声がする。
マリーの祖父母の声だ。
「司教様のおかげですね。司教様が来てくれる前は、マリーは今にも死んでしまいそうだった。顔は青白く、唇は渇いてひび割れて……」
「そうだな。そうだったな」
「ウォーレン商会の会長さんが、司教様を連れて来てくれたんでしょう?お祖父さんに頼まれたと言っていたけど、忙しい会長さんがわざわざ自分で動いてくれるなんて、ありがたいことだわ」
祖母が涙声でそう言った直後、荒々しい足音が聞こえて、乱暴に扉が開く音がした。
なに!? どうしたの……!?
マリーは薄目を開け、そっと様子を窺う。
部屋に入って来たのはマリーの父親だった。
「オヤジ!! どういうことだよ!!」
「どうしたの。ジャン。何を怒っているの?」
祖父に詰め寄る父親に、祖母が問い掛ける。
父親は祖母の問いを無視して、祖父に掴みかかった。
「宿屋と食堂の土地と建物の権利書をウォーレン商会に渡したって本当か……っ!?」
「誰に聞いた?」
「さっき、ウォーレン商会の会長が、番頭と一緒に来たんだ。司教様を無事に送って来たと言った後、一か月後に宿屋と食堂を明け渡すようにって……!!」
「そんな……!!」
悲鳴のような祖母の声を聞いたマリーは、ベッドから飛び起きた。
その直後、サポートAIの声が響く。
「条件を満たしましたのでマリー・エドワーズに固有クエストが発生しました。
尚、このクエストは強制受注になります。
詳しくはステータス画面の『クエスト確認』をご確認いただくか、転送の間でサポートAIにお尋ねください」
クエスト、来たー!!
マリーは叫び出したい気持ちをこらえて唇を噛み締める。
両親や祖父母には、サポートAIの声が聞こえていないようで、言い争いを続けている。
誰も、マリーが目覚めて起き上がったことに気づいていないようだ。
「……」
マリーはそっとベッドに横になった。
そして、小声で呟く。
「リープ」
一瞬、意識が暗転した後、悠里は転送の間にいた。
無事に転移ができたようだ。
***
『アルカディアオンライン』では、一年は12か月である。
月の呼び名は『赤月』(1月)『藍月』(2月)『黄月』(3月)『花月』(4月)『若葉月』(5月)『紫月』(6月)『風月』(7月)『光月』(8月)『舞月』(9月)『奏月』(10月)『歌月』(11月)『白月』(12月)
『アルカディアオンライン』のNPCには個別に誕生日を祝う習慣が無く新年の赤月1日を迎えると一斉に年齢を重ねる。
藍月(2月)の初めに生まれた子も、白月(12月)の終わりに生まれた子も翌年の赤月1日を迎えると『1歳』とされる。そのため、白月の子は幼少期に苦労することが多い。
マリー・エドワーズが生まれたのは花月(4月)7日。
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