第496話 協力要請
「ということでこれから一カ月から二カ月以内の間にモンスターの大軍が海から押し寄せてくるわ」
「いやぁ、何がということでなんですかね?」
「あんまりに唐突な話すぎてついていけないんですが」
探索者組合の後に俺たち五人がやってきたのは、豊島区内にある俺たちのアビス・ガーディアンのオフィス。
そこに居たのはかつて俺がけちょんけちょんに伸した海外で出会った探索者たちで、今やウチの組織の一員であるジャックやジョージ達だ。
彼らは唐突な零の話に頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいた。
「俺たちは海底まで行ってきたんだけど、そこには魚人みたいなモンスターの巨大な町があってな。そこ以外にも二か所大きな町というか国があるらしく、その三つの国が協力して全世界に同時攻撃を仕掛けてくるっぽいんだよ。おおよそ戦力は一億五千万」
「いやいやいや、マジッすか?」
「ああ。大マジだ」
「それはヤバいっすね」
俺の補足説明を受けて全員の顔が青ざめる。
そりゃあ一億五千万の軍勢が世界中に押し寄せてくると言われればゾッとするの気持ちも分かる。
「勿論お前達に死ねというつもりはない。自分たちでできる範囲で海岸付近の人たたちを守ってくれ。お前達には死んでほしくないしな」
『うっ。兄貴!! わかりやした!!』
俺の話を聞いていた皆は何故か涙を流し、俺にウルウルとした目を向けてきた。
「だから俺は兄貴じゃない」
少し嫌だったので俺は肩を竦めて首を振った。
「零。久しぶりだな」
「ええ。久しぶり」
次にやってきたのはタイトなスーツに身を包んだブロンドヘア―の女性であるアグネスが支部長を務めるイギリスのハンターズギルド。
「今日はどういう用件だ?」
「そうね。最近海岸から魚人みたいなモンスターが襲っている事件あると思うんだけど、その侵攻が世界で一斉に起こりそうなの」
「最近は収まっていると聞いていたが?」
新藤同様にアグネスさんもどうやら終息に向かっていると考えていたらしい。
あまり勝手に助けすぎるのも考え物かもしれない。
「私たちがある程度追い返していたからね」
「はははっ。私たちは零達に守られていたのか。水臭いじゃないか」
このこの~と肘で礼を突っつくアグネス。
「現状私たちだけでも対処できていたから。でもこれからはそうもいかなそうだからきちんと情報共有と協力体勢を作っておきたかったのよ」
「そういうことか。勿論こちらとしてはありがたい話だ。受けさせてもらおう」
零の話を聞いたアグネスは快く頷いてくれた。
「そう。魚人達の軍隊が押し寄せてくると思うから無理はしないでね」
「分かっている。出来るだけ海岸近くには高ランクの探索者を集めておくさ」
「お願いね」
「勿論だ」
二人はお互いに握手をしてハグをした後でハンターズギルドを後にした。
「おお!!我らが王よ。どうされたのじゃ?」
「えっと、これから世界中の海辺近くが騒がしくなりそうなので、一応お伝えしておこうと思いまして」
次に向かったのはエルフの里。
ここの人たちも多くはウチの従業員として働いているけど、平時は里に帰っている。俺たちを出迎えてくれたのは里の長だ。
長と言っても見た目は滅茶苦茶若くなってるので相変わらず違和感が凄まじい。
「ほっほっほっ。そうであったか。またとんでもないことをされるのじゃな?」
「いえ、できる範囲で世界を守ろうとしていて居るだけですよ」
「普通の人間は世界規模で考えることはせぬぞ。自分にはそんな力がないと分かっているからな。やはり我らが王は流石じゃな」
「そんな大層なことはしれませんよ。ウチにはラックという戦力があるので彼らに任せているだけです」
「そんな配下がいることも実力の内じゃ。それで話は分かったが、我らには何をしてほしいのじゃ?」
何を言ったところで全て称賛が返ってきて俺には困惑しかない。
「いえ、特に何かしてほしいということはないですね。ここを守ってもらえれば。後はもし海岸からラックの警戒網をすり抜けてきたモンスターが居れば随時討伐してもらえたら助かるかな」
「ふむ。私たちの力を試す場所もそうはないからのう。たまにはこの進化した体がどの程度戦えるのかは試しておきたい。そのまたとないチャンスとなれば張り切って参加しますのじゃ」
「ああ。無理はするなよ」
俺たちはそれ以外にもいくつかの場所に情報を共有を行ってできるだけ海岸に注視してもらおうように協力してもらうことにした。
あとは侵攻に備え、現在いろんな場所に散らばっているラックの影魔も海岸に集めて警戒を務めた。
それから一カ月ほどして世界中で海から魚人が現れたという話を聞いた。
どうやら始まってしまったらしい。
俺たちも急いで準備をした。
◼️◼️◼️
いつもお読みいただきありがとうございます。
また新作投稿してます。
こちらもよろしくお願いします!!
能無し陰陽師は魔術で無双する〜霊力ゼロの落ちこぼれ、実は元異世界最強の大賢者〜
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます