第484話 ぐわぁ。俺は強いられているんだ

 クリスマスを終えてからはシアと改めて二人で出かけてみたり、ダンジョンに潜ったりしていたら、あっという間に年末がやってくる。


 今日は大晦日。


 俺たちは佐藤家のリビングで特注した一辺に二人は余裕で並んで入れるくらい大きめなコタツを囲んでいた。


「んー、いや~、ここから出れなくなるなぁ~」

「ん」


 コタツの天板に顎を乗せてとろけている俺の隣にシアが陣取っていて、俺と同じようにタレている。いつもは無表情の彼女もコタツの魔力によって顔がトロンと緩んでいた。


 くっ。俺はコタツに入ることを強いられているんだ!!


「そうだねぇ」

「分かる~」


 俺の呟きに七海と天音が俺の左側の辺で同じように顔をコタツに乗せている。


「私もここにいていいのかしら?」

「いいんじゃない?私もいるし。ましてやパーティメンバーじゃないノエルもいるんだから」


 零は他人の家で年末を過ごすことが少ないのか、俺の向かって左の辺に座りながら困惑しているが、天音がジト目でノエルを見つめながら零の呟きに返事をした。


「これがジャパニーズコタツ!!素晴らしいデスよ!!」


 当のノエルはと言えば、零の隣でコタツにキャッキャとはしゃいでいた。俺の対面には母さんが一人で座っている。


「ウチも賑やかになったわねぇ……」


 母さんはお茶を啜りながら何やら感慨に耽っているようだ。


 なぜ年末だというのに皆がここに集まっているのかというと、天音の両親は海外にいるし、零は天涯孤独だし、シアは真さんとアンナさんがアンナさんの実家に行ってしまった上に、二人にシアのことをお願いされてしまったので、どうせなら皆で年を越そうということになったからだ。


「ふふふっ。孫の顔が見れる日も近いかしら?」

「そうだな。二人の子供ならさぞかし可愛いだろう」

「ん。頑張る」

「いやいや、まだ結婚してないからね!?」


 二人にお願いされた際にこんなやり取りがあったが、俺たちはまだ付き合い始めたばかりなので、その前に結婚の方が先だ。今はまだ何も考えられないけどな。


 とりあえず三人の気が早すぎる。


 それと、ノエルも一人でやってきた留学生ということで、こっちには保護者も友人も俺達以外いないらしく一人ぼっち。流石に年末をたった一人で過ごすのは寂しかろうと誘ったら、食い気味に了承してウチにくることになったわけだ。


「今年は本当に色々あったなぁ……」

「ん……」


 俺も母さんと同じように今年一年を振り返り、これまでの出来事に思いを馳せる。


 今年の初めころの俺に今の状況を説明したところで絶対信じないだろうな。彼女が出来た上に、妹を含めて美少女に囲まれた探索者生活を送っているなんてあの頃の俺にはありえないことだったし。


「まさか私も高校に入学すると思わなかったなぁ」

「私も誰かとパーティを組むなんて思いもしなかったわ」


 天音と零も各々自分のこれまでとは違い過ぎる一年だったみたいで、こたつでダレながら呟いた。


「まさかお兄ちゃんが誰かと付き合う日が来るなんて思わなかった!!まぁお姉ちゃんは可愛いから百歩譲って許してあげるけどね!!」

「ん。ななみんありがと」

「ふん。べ、べつにまだ諦めたわけじゃないだからね!!」


 七海が体を起こして少し不機嫌そうに顔を逸らして答えると、シアの言葉に妹はそっぽを向いたまま顔を赤らめて返事をした。 


 何を諦めていないのか気になるところだけど、覗いてはいけないような気がしたので、突っ込むのは止めておいた。


「わ、私は普人様のペットになりたいデスよ~」


 さらに業が深そうな発言をするノエルは完全に無視だ。


「これが放置プレイ……デスか!?それも悪くないデスよ~」


 それさえも都合のいいように変換されて手に負えなくなってきているのは見て見ないふりをするしかない。


 クリスマスのプレゼントを渡してからドンドン拍車が掛かってきている気がするのは気のせいだと思いたい。


―ピンポーンッ


「あっ。どうやら来たみたいね」

「お、マジか」

「受け取ってくるわね」

「よろしく~」


 家のインターホンが鳴って母さんが出ていく。


 今は丁度お昼時。佐藤家で大みそかにはとある食べ物を食べる。


「あーっ!!お寿司だ!!やった!!」


 母さんが戻ってくるなり、七海が母さんが持っている物に目を輝かせた。


 それは大きな寿司桶だった。


 そう。ウチでは大みそかにはお寿司を食べる習慣がある。だから、今日はお寿司の出前を頼んだ。お寿司屋さんに頼み込み、札束というお金の暴力で忙しいこの年末に寿司を配達してもらった。


 俺達はお金はあるのに家以外は依然とあまり変わりのない生活をしているので、普通にお寿司とかくるとテンションが上がる。これは小さい頃からそういう生活を刷り込まれているというのが大きいかもしれない。


「はい、どうぞ。特上寿司」


 コタツの上に複数の大きな寿司桶が並べられた。


 そこにはまるで宝石のようなネタの数々の整然と並んでいて光を放っている。


「それじゃあ、食べましょうか」

『はーい!!』


 俺達は各々目を輝かせ、寿司を食べ始めた。






■■■

新作始めました。

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ロッコマン〜裏切られて囮にされたけど、実はステータスが複数覚醒してたので、化け物が溢れる現実も異世界もイージーモード〜

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