第446話 祭りの後

 文化祭が終わった後で教室の戻った俺達。クラスの状態は喫茶店の状態のままだけど、そこでホームルーム的なことを行れる。


「今日は一日お疲れ様だったなお前たち。楽しめたか?」

『はーい!!』


 先生は獰猛な笑みを浮かべてクラスメイト達に尋ねると、彼等は元気のいい返事を返した。


 食材を取りに行ったり、時音先輩の家に家具を取りに行ったり、バンドの練習をしたり、接客の練習をしたり、飾り付けをしたり、結構色々大変だったし、当日も色々なトラブルに見舞われた。


 でも、とても楽しめた文化祭だった。


 返事を聞く限り、他のクラスメイト達も概ね楽しめたようだ。


「それじゃあ、今後の話だが……」


 文化祭の準備期間のことを思い出している間にも時間は進み、外はもうすぐ日も落ちそうな黄昏時。後片付けや売り上げの集計など明日やることになった。売り上げ金は先生が一時的に預かる形だ。文化祭と片付けが土日に当たっていて、月曜日と火曜日が振替休日となっている。


 そのため、クラスの打ち上げをそのまま教室にて行われることになった。


「こんにちは~。デリバリのお届けに参りました。出前殿です~」


 ちょうどそこにデリバリーがやってきた。しかも、一人ではなく、二人でやってきている。それはつまり結構な量があるということだ。


「誰か頼んだのか?」

「え?俺は知らないけど?」

「お前は?」

「私も知らない……」


 でも、誰もそんなものを頼んだ覚えがなく、近くの生徒達でお互いに顔を見合わせて話し始め、教室内がざわつき始める。


「誰が頼んだんだろうな?」

「さぁな。間違いとかじゃないか?」

「いや、流石に間違いなら教室まではこないだろ」

「だよなぁ……」


 俺とアキも意味が分からなくて呆然としながら益体の無い会話を交わす。


「ああ。それは私が頼んだ」


 しかし、そんな所にまさかのダークホースである先生が名乗りを上げた。


「え!?支払いはどうすればいいんですか?」


 勿論すでに頼まれていたので心配になるのは支払いの問題。勿論今日の売り上げを使えば払えるだろうけど、勝手に頼まれた出前に対してクラスで頑張って稼いだ金を使いたいかというと、中々そう思える人間はいないと思う。


「私が勝手に頼んだんだ。勿論おごりだ。お前たちは大分頑張っていたようだからな。ジュースやお菓子も一応買ってきているから好きに食って飲め」

『やったー!!』


 しかしその問題も俺達の杞憂に終わり、なんと今まで一度もそんなことをしてくれた試しがなかった先生がおごってくれるということで、教室は歓声に包まれることになった。


「今日は皆お疲れ様でした。結果的に私たちのクラスの出し物、執事&メイド喫茶は大成功だったと思います。先生が色々と準備してくれたので感謝しながら楽しみましょう!!乾杯!!」

『先生ありがとうございます!!かんぱーい!!』

「おう。気にするな!!私も楽しむからな!!」


 リーダー女子である土屋さんが皆の前で挨拶を行い、俺達はジュースを掲げて打ち上げが始まった。


 先生はすでにビールらしき缶をプシュっと音を鳴らしてあけ、同じように土屋さんの音頭で掲げてぐびぐびと飲み始まる。


 先生よ、それが飲みたかっただけじゃないのか……。


 そんな風に勘繰ってしまう程の良い飲みっぷりだった。


 それに、仮にも教師がそんな風でいいのか……。


 俺はそんな風に思わざるを得なかった。他のクラスメイト達も何とも言えないような顔をしていた。


 しかし、それは考えても仕方がないこと。クラスメイト達は考えるのを止め、仲の良い奴らで集まって輪を作り、デリバリーされたピザやら何やらを分けて囲んだ。


「いやぁ。疲れた」

「お疲れ」

「お前もな。それにアレクシアちゃんに、ノエルちゃんも」

「ん」

「お疲れ様でしたデスよ」


 当然俺の許に集まるのは、アキ、シア、ノエルの三人だ。俺達は喫茶店の四人席に座り、改めて俺達だけで乾杯し合う。


「そういえば、いつの間にお前バンドなんかやってたんだよ」

「あ、言うの忘れてたわ」


 アキの突然の質問に俺はそういえば練習するのに夢中になってアキにバンドを組んだことを言ってなかったな。うっかりしていた。


 でも情報通なんだから知ってそうなのに知らなかったのは珍しい。


「かぁ~!!これだから主人公リア充野郎わよ!!」

「俺は巻き込まれただけだっての!!それはさておき、バンドやってるのを知ってるってことは体育館での出し物を見に来てたのか?」


 吐き捨てるように言うアキだけど、俺も断固して巻き込まれたことを譲らない覚悟で返事をして、疑問に思っていたことを尋ねた。


「ああ。いきなりハロウィンみたいな仮装で出てきたと思ったらお前とアレクシアちゃんと天音ちゃんだったからびっくりしたぞ」

「俺は参加するつもりなかったのになぜか強制的に参加なったんだよ。まぁ参加することになったからには本気で練習したけどな」

「確かにお前らの演奏はかなり良かったと思うぞ」

「それはよかった」

「ん」


 アキが率直に褒めてくれたので、俺はとても嬉しい気持ちになった。シアもアホ毛が音符マークになって、心なしか頬が赤くなっているので満更ではないではないと思う。


 それから俺たちは、料理に舌鼓を打ちつつ、文化祭のことから普段のことまでを和気あいあいと話し続けた。


 しかし、徐々に話題が消土どなりますか?昼間のような喧騒がなくなり、その静かさはとても寂しいものだった。

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