第420話 感謝の散歩
「よーし、お前らそろそろ学校に到着だ。起きろよ」
バスの中で寝ていた俺たちは、先生の声によって起こされる。
どうやら学校に帰ってきたらしい。
俺達だけでなく、クラスメイト全員が徐々に起き始めて、荷物を確認しながらバスを降りていく。
「ふわぁ~」
「よく寝たな」
「そうだな。まだ寝たりないけどな」
「分からなくはない」
アキが大きく伸びをして目端に涙を浮かべている。
俺も体を曲げたり伸ばしたりして体を解してから、シアとノエルを起こし、バスを降りて宿泊研修閉会式を経て、今回の行事は終わりを告げた。
行事が終わってもシアとノエルは半分寝ているような感じで未だにウトウトしていて、立ちながら舟をこいでいる。
クラスメイト達は眠そうにしつつも各々の班ごとに解散して帰り始めた。
「終わった終わった」
「よーし、俺は寝る!!」
「全く寝るの好きだな」
「まぁな」
俺たちも同じように荷物を持って寮へと向かう。
アキはこれから帰ってもっと寝るらしい。
確かに一日くらいのんびりしたい気持ちがある。
俺も可能ならラックの寝ころんでモフモフして過ごすのも悪くない。
「帰るぞぉ」
「ん……zzz」
「はーい、デスよぉ……zzz」
俺はシアとノエルの手を引っ張ってなんとか寮へと連れていく。気付けばすぐに女子寮についた。
「ちゃんと帰れよ」
「ん……zzz」
「はーい、デスよぉ……zzz」
俺の言葉が聞こえているのかよくわからないけど、二人はフラフラとした足取りながら女子寮の中に入っていく。
あとは寮母さんに任せる他ない。
「俺らも帰ろうぜ」
「おう」
シアとノエルを見送った俺たちは男子寮へと帰還を果たした。
「おかえりなさいませ、佐藤様、佐倉様」
「ただいま霞さん」
「ただいま」
俺たちはいつものように霞さんに出迎えられる。彼女と会うとちゃんと帰ってきたんだなぁという気持ちになる。
「今後どうされるご予定ですか?」
「俺はもうひと眠りします」
「俺は風呂に入ってからご飯を食べてから仮眠しようと思います」
「承知いたしました」
霞さんの質問に各々の答えを返すと、俺たちは自分の部屋を目指して歩く。
「それじゃあ、またな」
「ああ」
アキと別れて部屋に入り、風呂の準備をした俺は、風呂に入って昼食を食べた後、再び部屋に戻ってきてベッドに横になった。
「ウォンッ」
「今回もお前のおかげで助かった。ありがとな」
ラックが姿を現して小さな声で鳴き、俺に頭をこすりつけてきたので、撫でながら感謝を告げた。
「ウォンッ」
「役に立ててうれしい?はぁ~、お前って奴は。どこまでも可愛いやつだ!!」
今回もラックの力のおかげでダンジョンからの脱出だったり、ドラゴンからばらばらに逃げていった同学年のみんなの位置を把握して転移で連れ戻せたりした。
ラックがいなければ捜索にかなりの時間を盗られてしまったはずだ。もしかしたら予定通りに宿泊研修が終わらなかった可能性もあった。
本当に感謝しかない。
ラックは相変わらず俺を喜ばせるような答えを言ってくれるので、思わずワシャワシャと激しく撫でてしまう。
「ラックは何かしたいことはないか?」
俺はいつも頑張ってくれてるお礼に何かやってほしいことがあれば叶えてやろうと思い、尋ねる。
「ウォンッ」
「一緒にダンジョンに行きたい?」
ラックの答えはダンジョンでの散歩。
確かにラック自身は俺と一緒にいることが多いからあまり動けていないのかもしれない。いつも役に立ってくれてるのにストレスを溜めさせてしまって申し訳ない気持ちになる。
「そうか。もっと体を動かしたいんだな?」
「ウォンッ」
「分かった。どこのダンジョンがいいんだ?」
ラックは思った通り、もっともっと体を動かしたいようだ。行きたいダンジョンがあるなら連れて行ってやることにした。
「富士樹海?あぁシアの両親を見つけたのもそこだったな。確かにあそこは今まで一番強い敵が多かった。あそこでストレス発散したいのね」
シアの両親を見つけた富士樹海のダンジョン。
あそこは確かに敵が一番強かった。ラックが勝てない敵が居たくらいだからな。今度は負けないように強くなりたいんだろうな。
「それじゃあ、行くか?」
「ウォンッ!!」
せっかく帰ってきて風呂に入ってサッパリしたところだけど、いつもすっきりした目覚めのためそこまで眠くない俺は、ラックとともにダンジョンへと飛んだ。
今日は久しぶりにラックと狩り勝負をした。
影魔まで使われると勝ち目がないので、一度目は影魔を使わずに一対一で戦って勝利し、二度目は影魔を十匹を連れたラックと戦ってものすごく接戦を演じた結果、俺は負けた。
初の敗北だった。
昔は全く俺に適わなかったのに、今では影魔を使えば俺にでも勝てるようになった。本当に強くなったんだなと思う。
やっぱりウチのラックは本当に凄いやつなんだと実感した。
「俺は帰るけど、ラックはどうする?」
「ウォンッ!!」
「そうか、一緒に帰ろう」
狩り勝負をして目いっぱい体を動かしたラックは満足したらしく、俺たちも自室に転移して戻り、再び風呂に入った後でベッドに横になり、眠りにつくのであった。
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