第416話 チートやチート、チーターや!!
バーベキューを終えた皆はゆっくりと下山を始める。一般人がいない俺たちはこのままではまた最速で下山して、待つことになってしまう。
そこで俺は班員に提案した。
「ちょっと近くのダンジョンにでも寄っていかないか」と。
この班の中でアキだけが俺たちの秘密を知らないけど、普通に潜る分にはバレないはずだ。ラックの能力を使わなきゃいいだけだし。
それにアキになら最悪ラックのことを話してもいいかなと思っている。
「ん?そんなものがあるのか?」
「ああ。ちょっと調べたら一つ近くにあるらしい。ランクはD」
「どのくらいだ?」
「歩いて二十分くらいかな。走れば十分くらいで行けると思う」
「そうだな。ちょっとくらい行ってもいいか」
「そうこなくっちゃな」
アキは乗り気になった。シアはダンジョン大好きなので特に反対はせず、ノエルも反対意見はなかった。
「それじゃあ、時間ももったいないし、軽く走っていこう」
『おー!!』
俺たちはすぐにダンジョンへと移動した。
ダンジョンに近づく前に換装で着替えた俺達。
「通っていいぞ」
『ありがとうございます』
監視員にも何も言われることなく、中に入ることができた。
「ここは廃墟型ダンジョンか?」
「そうみたいだな」
ここは俺が地元で見つけた野良ダンジョンに少し似ている。ただ、周囲の植物が大きいということはない。
「アキは前衛でいいんだよな?」
「そうだな」
「ノエル以外は前衛か。誰か一人ノエルの防御を担う中衛が必要かもな」
パーティとしては俺たちはバランスが悪い。普段も良いとは言えないけど。
「そうだなぁ。でも俺は遠距離攻撃は持ってないぞ?」
「そしたらシアにやってもらうか」
「ん」
シアならどこかの剣士よろしく斬撃を飛ばせるので、中衛としても活動可能だと思う。シアも特に問題ないらしい。
「Dランクダンジョンなら一人でも大丈夫デスよ?」
「そういう油断が命取りになったりするんだぞ?」
「わ、分かったデスよ」
ノエルが自分の素のステータスのランクがBであることからそんなことを言うけど、何があるかわからないので忠告すると、ノエルはビクッとして首を縦に振った。
「それじゃあ、行くか!!」
「おー!!」
俺たちは俺が先頭になってダンジョンを突き進む。
―パァンッ
―パァンッ
―パァンッ
―スパァンッ
―スパァンッ
―スパァンッ
出てくるモンスターは全て俺とシアが遠距離から仕留めていく。
森林ダンジョンで見たことにあるモンスターや見たことのないモンスターが出てきたけど、Dランクだけあって弱すぎて瞬殺だった。
「……」
俺たちは終始無言。
「いや、ちょっと言わせてもらってもいいか?」
と思ったら、アキが口を開いた。
「ん?どうかしたのか?」
俺はモンスターを消し飛ばした後で、アキの方を向いて首を傾げる。
「いやいや、どう考えてありえないだろ!!」
「何がだよ?」
アキがすごい剣幕で俺に詰め寄ってくるけど、何がおかしいのか分からない。
「なんでDランクモンスターを一撃で消し飛ばしてんだよ!!」
「いや、そんなこと言われても俺のパーティみんなできるし。な?」
「ん。楽勝」
「はぁ!?」
アキは何をそんな怒ってるんだろうか。
「俺もBランクモンスターは倒せるようになっているし、シアもそのくらい余裕だ。当然俺達よりもランクの高い天音もできるし、妹も殲滅力だけで言えばDランクモンスターくらいなら数百匹くらい簡単に消し飛ばすぞ?」
零に関してはあまり言っていないから言わないことにする。
「はぁ……分かった」
「そうか分かってくれたか」
アキがため息を吐いて首を振る。あきれながらもわかってくれたようだ。
「ああ!!分かったよ!!お前たちチートだってことがなぁ!!」
そう思いきやアキがキレながら叫んだ。
「いやいや、チートなわけないだろ?」
「チートじゃない奴はそんなことできないんだよ!!」
俺は否定するけど、アキは聞く耳を持たない。
「そんなことないぞ。できるぞ」
「いったいどうやったらそんなことができるんだよ!!」
できるかできないかで言えばできるはずだ。
どうやってやるかというと、熟練度を上げるということだ。
なんたって裏試験だからな。
能動的な熟練度の上昇は、すさまじい力を発揮する。
「き、気合かな」
しかし、裏試験のことを俺自身の口から漏らすわけにもいかないし、俺が熟練度しかないということは誰にもバレるわけにはいかないので、根性論を述べるしかなかった。
「やっぱりお前らはチートだチート、チーターや!!」
案の定アキは納得せずに喚き散らした。
「チートで、モテて、ランクもどんどん上がってって!!いったいどこの主人公なんだよ、お前は!!」
「知らん!!」
なんだか言われのない非難を受けることになった俺達。
しかし、どうしてやることもできないので、せめてもの償いとしてパーティを組んで、経験値を分配してやるのであった。
「すげぇえええええええええ!!レベルめっちゃ上がってるじゃん!!」
そのおかげかダンジョンから出るころにはホクホク顔になって機嫌が直っていた。
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