第411話 平穏の帰還
「ふぅ……これで終わりかな」
「ウォンッ」
俺達が謎の積乱雲を破壊し終えると、ラックがこれが最後であることを肯定する。世界中を飛び回って探しているが、どこにも見当たらないようだ。
それならもう大丈夫だろう。
「そうか。それじゃあ、一旦帰って休もう」
『了解!!』
自宅よりも学校の寮の風呂の方が沢山入れるので、寮の風呂に入ってから佐藤家へと帰還した。
「あら?ラックの姿が変わったわね?」
「ああ。俺の願いを叶えるために進化してくれたんだ」
「へぇ~。ラックは凄いのね」
「ウォンッ」
佐藤家に帰ると、母さんがラックの姿の変化に気付いたが、流石というか母さんは結構懐が深いので、少し感心するだけで済ませてしまった。
ラックは母さんにも撫でられられながら褒められてご満悦といった様子だ。
「色々話したいことはあると思うけど、今日は働き過ぎたから休もうか」
『はぁーい』
その後、今日の所は雲を全滅させたので、一旦寝ることにした。
「おはよう」
「おはよう。あんたたちのやったのことがニュースになってるみたいよ?」
「マジ?」
「ええ」
朝起きて母さんが俺に会うなりそんなことを言う。
「あ、ホントだ」
『……一体あのモンスターはなんだったのでしょうか。何も分からないままモンスターは消えてしまいました』
俺はテレビを見ると、ニュースでは空からモンスターが消えたことがどこの局でも取り上げられていた。
どこの誰がそんなことをしたのか?
どうやってあの雲に近づいたのか?
どうやってあの雲を消したのか?
そもそもあの雲はなんだったのか、どこから現れたのか?
これからの影響は?
などが議論されている。
一週間程、世界中を悩ませた現象が一夜にして消えればそれは話題にもなるか。
「おはようございます」
「あら、零さんおはよう。早いわね」
暫くニュースを見ていると、次に起きてきたのは零だった。
「いつもこのくらいには起きているので」
「そう。昨日は夜遅くまでお仕事していたんだから、もう少し寝ていても誰も文句は言わないと思うんだけど」
「癖になっているのか、目が覚めてしまったので……」
「まぁ、無理して眠る必要もないけどね。朝ご飯食べるかしら?」
「ありがとうございます。いただきます」
母さんとやり取りをしてそろそろ準備が終わりそうな朝食の席に着く。
「零、おはよう」
「ええ、佐藤君もおはよう」
俺もニュースを見るは止めて席について零に挨拶をした。
「早速世界中で話題になっているみたいね」
「ああ。俺もニュースを見て初めて知ったよ」
「世界流通の一大事だから注目度も高いから当然なんだけどね」
「確かに。空の問題が解決するなら、今陥っている物価上昇も落ち着くだろうしな」
「ええ。とはいえ、すぐに空路での輸送再開とはいかないでしょうけどね」
「それもそうか。何度か無人飛行機でも飛ばして確認して、有人で試してと段階踏んで安全の確認が取れたらって感じか」
「おそらくね」
「お待ちどおさま」
俺と零がニュースの話をしていると、母さんが朝食メインをテーブルに並べる。
「どうせ他の子達は起きてこないでしょうから先に食べてしまいましょ」
「そうだな」
「そうですね」
『いただきます』
俺達は七海たちが起きてこないので先にご飯を食べた。
それからさらに数時間程たってようやく起きてきた他のメンバーが朝食を食べ終えると、ようやく話をすることになった。
「どうやら今の所、積乱雲が再び発生したり、空にモンスターが現れたということはないみたいね」
「ラックにもパトロールしてもらっているけど、今の所そう言った報告はない」
消滅させてからそれなりに時間がたったけど、今の所積乱雲が復活した様子はない。
今のまま行けば徐々に世界も元に戻るはずだ。
「そっか。これでスイーツも安くなるね!!」
「ん」
「それは大事ね」
「そこなのか!?」
七海たちは甘い物が高くなっているのが気になっていたらしい。
「当然だよ、お兄ちゃん!!女の子は甘い物で出来ていると言っても過言ではないらね!!」
「それは過言だろ……」
七海は俺の返事に対して、叱るような態度で話すが、どう考えても内容がおかしい。
「何はともあれ、これで解決ってことでいいのかしら?」
「原因も何も分かってないけどな」
天音の言葉に俺は肩を竦める。
「そこなのよねぇ。原因を潰さないと、また次が起こるかもしれない」
「そうなんだけど、今の所ラックにも探させているが、何も見当たらないからな。どうしようもない」
肝心要の原因が分からないと何度も起こる可能性があるからどうにかしたいところだけど、今のところ何も見つからなので対処のしようがない。
歯切れが悪いけど、今回はこれでよしとするしかないだろう。
「これからはラックがいるから大丈夫」
「まぁそれもそうね」
それに今回のことでラックも進化した。陸も空もパトロールしていれば、影響を及ぼす前に叩くことも出来るだろうし、次からは後手に回ることもないはずだ。
俺達はしばしの間平穏な会話を楽しんだ。
それから程なくして世界中の流通は回復し、一時は高騰した物価も徐々に落ち着いていくことになった。
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