第409話 普人君のリベンジ!!

「せいっ!!」

「グギャアッ」


 俺たちは今、月あかりに照らされながら空の旅を楽しんでいる。つまり俺はグリフォンとフェニックスと並んで飛んでいるというわけだ。


 もう操空術は自由に操れるようになったし、ドゥラゲンボールにも劣らない動きが可能だからな。


 ただ、時々モンスターが襲い掛かってくるというオプション付きだ。その都度俺がさらに強くなった気功パンチで飛びながら撃ち落としていく。


 この程度なら足場がなくても平気だ。


「夜は夜で空を飛んでいると、飛行の邪魔をするために、近くのあの雲から一定量のモンスターが出てくるみたいだな」

「そうねぇ……いや、それよりもホントに飛んでるわね……。一体どうやってるのそれ」


 俺がモンスターを消し飛ばした後で呟き、天音がその横をグリフォンに跨って呆然としたい様子で尋ねる。


 至極当然の質問だよな。


 熟練度のことは言えないけど、これをスキルということにすれば、いけるんじゃないだろうか。


「天音は"気”ってわかるか?」

「き?樹木とかってこと?」


 俺の"き"という発音では木と区別がつかなくて問い返す天音。


 確かにすぐには連想するのはそっちだよな。


「いんや。気功とかって呼ばれるもののことだ」

「え?なにそれ、眉唾ものじゃないの?」


 俺は天音の返事を否定しながら嘘だらけの返事をしたら、天音はきょとんとした表情になる。


「いや、存在している。俺は習得している」

「ああ。つまりスキルってことね」

「まぁな」


 これで俺が気功のスキルを持っているという認識になるはずだ。


 スキルは千差万別。人によって全く異なるのでどんなスキルも存在する可能性がある。特に最初から持っているスキルは固有スキルであることが多く、世界で一人しか持っていないスキルも多い。


 そのため、疑問視される可能性もほとんどない。誰かに理解できない力を説明するのにこれほど便利なものを利用しないという手はない。


「あっ!!まさかドゥラゲンボールを見て?」


 そして俺が気を使えるということが分かると、七海が気功繋がりでドゥラゲンボールにたどり着く。


「そういうこと。昔鍛錬して飛べるようになったシーンがあったのを思い出してな」

「すっごーい!!リアルドゥラゲンボールじゃん!!」


 操空術で空を飛んでいるシーンを見て、仲間の一人が操空術を使えるようになる場面を思い出したわけだけど、七海は目をキラキラさせて喜ぶ。


「創作の中にお力を使えるなんて、や、やはり、普人様はゆ、勇者様なのでは?」


 それと同じようにジャパニメーション大好きっ娘であるノエルも俺を見ながら驚愕して何やらブツブツと呟いているが、触れないほうがよさそうだ。


 もちろんリアルなのは空を飛ぶだけじゃない。

 

「みんな来るわよ!!」

『おー!!』


 雲に近づくと昨日と同じように中からわらわらとモンスターが現れ始める。


 零の掛け声で俺たちは各々モンスターに向かって行く。


 俺は本当な足場を作り出して、そこから攻撃を行う。


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」


 どこかのスタンド使いも顔負けのスピードで気功をパンチを繰り出しながら、足場を作って空を駆ける。


 七海たちも襲い掛かってくるモンスターたちを魔法や飛ぶ斬撃などで応戦して多々落としていく。


 しかし、このままではこの前と何も変わらない。


「ラック!!」

「ウォンッ」


 俺は気功壁の足場を沢山。それこそ何千という単位で出現させると、そこにラックを呼び出した。


 ラックはすぐに足場に影魔を召喚する。


「よし!!モンスターを足止めしてくれ!!」

『ウォンッ』


 ラックたちに指示をすると、影の使った攻撃で次々とモンスターをせん滅していく。七海たちもラックたちの打ち漏らしを倒していた。


 これなら十分な時間がとれそうだ。


 俺たちはあふれ出てくるモンスターたちを、こっちも数の暴力で抑え込んで、できるだけ雲に近づいた。


「よし、やるか!!」


 俺は半身で立って、両手を花びらのような形に合わせて腰だめに引く。


「はぁあああああああああ」


 合わせた手の中に気を集めて圧縮させていく。


 手の内側で集まった気が今にも暴走しそうになるけど、それを抑え込んでどんどん気を集める。


「あ、あれってまさか!?」


 七海が俺のほうを見て驚愕の表情を浮かべた。ほかの面々も何が起こるか分かったらしい。


「皆、ラック退避!!」

『了解!!』

『ウォンッ』


 十分に気の力が手の中に集まったことを確認すると、七海たちとラックに避難を指示し、ラックは転移で姿を消し、七海たちも俺の前からずれた。


『ギャォオオオオオオオンッ』


 その瞬間、その場にとどまる俺の元にモンスターが多数集まってくる。


「お兄ちゃん!!」


 その光景を見て七海が心配そうな声をあげたけど、何も問題はない。


「はぁあああああああああっ!!」


 俺は群がってくるモンスターとその後ろに控える雲めがけ、構えていた手を突き出して必殺の攻撃を放った。


 集められた気が俺の行為によって指向性をもって巨大な光線となって前へと突き進む。


「グギャ――」


 モンスターたちはその光に飲み込まれた途端消失していく。群がるモンスターでは俺の放った攻撃は全く止めることができず、俺の攻撃は雲に直撃した。


―シュウウウウウウウウウウッ


 俺が足場がいまいちの状態で放った攻撃と同様に雲に当たった途端、攻撃が吸収されているようにぶつかった端から消えていく。


「これでもダメか?」


 俺は思わず弱気な言葉が漏れるが、切らさぬように気の攻撃を手から放ち続けた。


―ピシ、ピシピシ、パリーンッ


 それから数十秒打ち続けると、ガラス質のものが割れるような音が鳴り響く。


―ズドォオオオオオオオオオオンッ


 そしてその直後、何かに阻まれて進まなかった攻撃が、一気に突き進んで雲を爆散させた。


 そのせいか、追加のモンスターは現れなくなった。


 俺たちはそのまま爆散した雲の様子が分かるようになるまでその場に立ち尽くす。


 それからしばらくして視界に現れたのは何もない青い空だけだった。


「これってモンスターの発生源をぶっ倒せたってことか?」

「ええ、そうじゃないかしら?」

「つまり成功ってことか?」

「そうね」


 俺と零が幾度かやり取りをする。


 つまりこれはリベンジ成功ということ。


『やったぁあああああああああ!!』


 俺たちはお互いに顔を見合わせ、タイミングを合わせて歓喜の声を上げるのであった。

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