第369話 勧誘

「ということでラックが影魔だけでの転移を実現しました」


 俺は緊急招集と称して次の日の学校終わりに皆を佐藤家に呼び出して報告した。


『えぇえええええええ!?』


 案の定全員が驚きで叫んだ。


「これで影魔が居る場所ならラックがいなくてもほぼ無制限で行けます」

「それって今までよりも皆の自由度が広がるよね!!」

「そうだな」


 影魔が近くに一匹いればほとんど何処にでも行けるようになるからな。いちいちラックを迎えに行かせる必要はなくなるし、無駄も減る。


 とんでもない便利さだ。


 そして転移のレベルアップによって実現可能になるのは、外部の人に影魔を付ければ、その人物が俺達と同じ業務をすることができるということだ。


「そこで俺達も今は学業があったり、手に負えなかったりするので、もっと手を増やさないか、という提案をしたいと思います」

「なるほどね。でも誰を勧誘するの?」


 そう、流石に世界中を回るのに俺達五人では数が足りなさすぎる。どうしても数が必要だ。


 しかし、信用できる人間は少ない。


 それじゃあ、どうするか。


「エルフを勧誘する」


 そう、人じゃなければいい。それ誰かと言えば俺を王と崇めるエルフ達だ。彼らなら俺達を裏切る可能性は人に比べれば圧倒的に少ないだろう。


『はぁああああああああ!?』


 俺の提案は再び全員の驚愕を呼んだ。


「いやだってあいつ等なら信用できるだろ?」


 皆驚いているけど、アイツら以上に信用できる人間なんていない。


「それは分かるけど、見た目はどうするのよ」


 確かにそこは問題だ。


 耳が尖ってるし、ハイエルフに進化した彼らは美形が過ぎる。


「その辺は魔法でなんとかなるんじゃないか?聞いてみようぜ」


 ただ、人間に紛れて暮らすこともあったかもしれないし、容姿に関してはエルフの魔法でどうにかなりそうな気がするんだよな。


「はぁ……そうね。聞くだけならそれ程時間がかかるわけじゃないし、行ってみましょう」

「そうだな」


 零も聞くだけならと了承して、俺達はすぐに転移を乗り次いでエルフの森へと移動した。


「これはこれは王よ。よくぞきたのう」


 俺達が森の中に入るなり、すぐに察知して長がやってきて俺達に跪く。


 止めて欲しいと言ったけど、無理だと言われてしまったのでそのままさせている。


「ああ。頭を上げて立ってください。元気そうですね」

「うむ。王たちのお陰で元気過ぎて困っているくらいじゃよ」


 エルフ達を立たせて皆の顔を見回すと、長が苦笑いを浮かべて肩を竦めた。


 他にも何名かのエルフが出迎えてくれたんだけど、皆艶々しているように見える。特に女性エルフ。なんだか肌のハリが違う気がする。


 何かあったんだろうか。


「まぁ元気なのはいいことだと思いますけどね」

「そうなんだがのう……。それはさておき、今日はどんな用なのじゃ?」


 俺の言葉に少し遠い目をする長。しかし、すぐに思考を切り替えて俺達の用件を尋ねる。


「ああ。皆に頼みがありましてね」

「引き受けるのじゃ」


 俺が今回訪れた理由を話し始めたら、長は詳細も聞かずに頼みを受けた。


 即答過ぎる。


「え!?まだ何も言ってないんだけど?」

「王の言葉は絶対。我らはどんなことでも力を貸す所存じゃ」


 俺は困惑しながら話を続けたけど、もう受けることは決定事項らしい。


 ラックも含めて忠義に熱すぎるのもどうかと思う。


「はぁ……分かりましたけど、一旦皆に話を聞いて欲しいんですけど?」

「分かった。皆のものを召集しよう」

「頼みますね」


 俺は呆れてため息を吐いた後、里に案内してもらった。


「王からワシらに頼みがあるということじゃ!!皆のものしっかりと聞くように!!」

『はい!!』


 里に着くと、俺達がやってくるなり、どこからともなく里中のエルフ達が集まってきて今里にいる全員が集まった。


「今俺達は……」


 俺はエルフ達の前に立つと、今俺達がやっている活動を説明し、人手が欲しいことを伝える。


「容姿に関しては精霊魔法でどうとでも出来るので、問題ないのう」


 やはりエルフの容姿に関してはやはりエルフと言えばという魔法でどうにか出来るらしい。


 問題は秒で解消した。


「分かりました。今の地球の状況については分かっていないんですよね?」

「そうじゃの。数百年森に籠ってばかりじゃったので」


 エルフ達は現在の地球の事を把握できていない。


 まずは数百年で生活はがらりと変わっているから、その辺りの講習会をやった方がいいかもしれないな。


 基本的にラックの影魔で移動するから問題ないとはいえ、もしかしたら一人で依頼者とやり取りすることもあるかもしれない。普段はこの森で生活するにしても、現代の生活に慣れておくに越したことはないだろう。


「そうですか。それじゃあ、まずは全員の探索者適性を調べるところからやりましょゆ。これがなければ活動が厳しいので」

「承知したのじゃ」

「零、頼めるか?」

「任せてちょうだい」


 なんにせよ、探索者適性がなければ話にならない。


 零に頼んで探索者適性を見てもらったところ、なんとその適性有率百パーセント。


 エルフ達はなんと全員が探索者適性を持っていた。

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