第362話 重大な決め事
なんだかよく分からないものを見せられた俺達は、なんだかよく分からないままに一日を過ごし、瞬く間に夜になっていた。
「ウォンッ。ワフワフッ。ウォンッ」
ラックは「女子たちは夜更かしさせずに、早めに寝かせるから任せろ」と、鳴いて女子のチームと一緒に捜索に当たるために出かけていった。
何処までも素晴らしい忠犬である。
そのため、最近学校以外の時間でちょこちょこ一人になる時間が出てきた。思えばラックとは四月に出会ってそれからほとんど一緒だったから新鮮な気分と同時に、少し寂しさも感じる。
特に寝る時にあのモフモフを堪能しながら寝れないのは辛いものだ。あれだけのモフモフは世界広しと言えども、ラックをおいて他にないと思う。
影魔だけでも影転移使えるようになればいいのに。今はラックから影魔への移動は出来るけど、影魔同士や、影魔からラックへの移動が出来ないので少し不便だ。
それと影収納に関してもラックからしかできない。情報のやり取りには困らないけど、人の移動やアイテムの受け渡ししたい時に少しだけ困る。
それができればラック本体が一緒に行かなくてもいいのに。
勿論これは贅沢な悩みなのは分かっているけど、一度便利を経験すると、もっと便利にと思ってしまうよね。
そういえば、俺達は完全にラックがいないと回らない生活をしているけど、モンスターの寿命ってどのくらいなんだろうか。それにもし殺されてしまった場合は復活とか出来るのだろうか。
近くに俺と同じように普通のダンジョンのモンスターをテイムしている探索者と会ったことがないからいまいち分からない。
「うーん、とりあえず殺されなければ基本的に死なないということか?」
俺はスマホを手に持って色々調べてみたけど、分かったのは殺された従魔は生き返らないということと、ダンジョンが出来てから最初にテイマーになった人物の従魔も含めて、殺されずに生き残っている従魔は今もまだ健在だということだ。
種族によっても違うかもしれないけど、ラックも数十年は一緒に入れるだろうか。もし俺が死んだら、七海か俺の子孫―出来るのかは不明だけど―の内、ラックを1番大事にしてくれる人間に引き継いでもらいたい。
そんなことを考えながら眠りに落ちた。
「ウォンッ」
「おはようラック。帰ってきてたのか」
俺が目を覚ますと、ラックの挨拶が聞こえた。ラックは隣に座っていて俺が起きると嬉しそうな顔をして尻尾を振る。昨日は堪能できなかったから暫しの間ラックのモフモフを堪能する。
「ウォンッ」
「ん?零から?どうしたんだ?」
しばしモフモフした俺が体を離したら、ラックが零から伝言があるという。昨日は零と天音のペアだったから、丁度良かったんだろうな。
一体なんだろうか?
「ワフワフッ。クゥーン。ワフッ」
「何?今日は大事なことを決めるから佐藤家に集合?分かったけど時間は?」
「ウォンッ」
「学校が終わったらすぐに来い?了解」
零からの伝言は、何か重要なことを決めるために学校が終わり次第家に集合しろ、ということだった。
そんなに重要な何かを決めることなんてあったか?
疑問に思いながら一日を過ごした。
「ん」
「ああ、そうだな。俺達は先に帰るな?」
学校が終わった後、俺とシアは頷き合って席を立つ。
「どうしたんだ?何か用事か?」
「ああ、ちょっとウチにな」
不思議そうに尋ねるアキに、俺も詳しい内容は知らないので新しい方の実家に行くことだけ伝えた。
「な!!すでに嫁のアレクシアちゃんと週末を家族で過ごすつもりか!!」
「ん」
「ちげぇよ。シアも勝手に肯定すんな!!」
アキが邪推してシアが勝手に頷いたので俺はかるーくチョップでツッコミを入れた。
「いたい」
シアは頭を擦る。
「それは本当デスよ!?」
そこにノエルも混ざってくる。
「だから違うって言ってるだろ。ちょっとパーティメンバーで話し合いがあるんだよ」
「誰が本妻かという話デスよ!?」
「違うっつってんだろ!!いい加減しろ!!」
ノエルが話をまぜっかえしてきて話が進まない。
「とにかく俺とシアは用事があるから先に帰る。以上」
俺は素早くその場から移動し、シアも俺の後をついてきたので、適当に挨拶をして教室を出た。
「あ、ちゃんと説明しろ!!」
「くっ!?絶対メンバーに入って見せるデスよぉおおおお!!」
アキとノエルの叫びが聞こえてきたけど、俺達は無視して家を目指した。
「おかえり。後は天音ちゃんだけね」
「こんにちは~」
俺達を出迎えた母さん。俺達のすぐ後で天音もやってきた。
「全員揃ったみたいね。零ちゃんも待ってるわよ」
「そうか」
「あ、普人君ひどい!!二人で先に行くなんて」
零も来ているみたいで俺とシアが玄関から家に上がろうとすると天音が抗議してくる。
そういえばすっかり忘れていた。
「わ、悪い!!それには深ーい事情があってよ、ははははっ……」
「ふーん、まぁいいけど……。あがりましょ」
慌てて苦笑いを浮かべながら謝る俺に、天音は訝し気な表情をして俺を見つめた後、すぐに表情を戻して俺達の横に入ってきて、靴を脱いで先に家にあがった。
「そうだな」
俺も後を追うようにして家に上がり、手洗いうがいをしてリビングへ。すでに皆が着席していて、後は俺が座るのを待っている状態だった。
「それでは、パーティ会議を始めます」
俺が腰を下ろすなり、零が話し始める。そんな物々しい雰囲気を醸し出して一体どんな話をするつもりなんだ……。
「そ、それで、零……。今日は重要なことを決めるという話だったけど、それは一体なんだ?」
俺は恐る恐る尋ねる。
「それは……」
零はゆっくりと口を開いた。
―ゴクリッ
俺は思わず喉を鳴らす。
「立ち上げる組織の名前よ!!」
「はぁあああああああああああああああ!?」
俺はあまりに拍子抜けする答えに思わず叫んでいた。
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