第329話 波乱の幕開け
明くる日。
アキと合流して久しぶりに学校に登校した。
基本的に俺達を空気のように扱っているクラスメイト達も、誰も死ぬことなく夏休みを終えることが出来たようだ。
「そういえば、どうやらようやく留学生が来るらしいぜ」
教室でアキがそんな話を俺にふる。
学校ではほとんど俺とつるんでいることが多いのに、こいつは一体どこからそういう情報を仕入れてくるんだろうか。
学校の七不思議とはよく言うものだけど、アキの方がよっぽど謎だ。
「そうなんだ。どんな奴なんだろうな」
「なんでも超絶美少女らしい」
俺が留学生ついて尋ねると、待ってましたと言わんばかりに、アキはニヤリと口端を吊り上げて答えた。
「へぇ。俺には関係なさそうだ」
シアや天音、そして零と仲良くしているだけでもありえないのに、これ以上そんな美少女と関わることはないだろう。
「そうだな。お前にはアレクシアちゃんがいるもんな」
無感情に返事をする俺に、アキがニヤニヤと笑いながらからかってくる。
「べ、別にシアは関係ないだろ!?」
「ん。私がいる」
「ほら、アレクシアちゃんもそう言ってるじゃねぇか」
俺が狼狽えながら答えたら、シアが至極当然と言わんばかりに会話に混ざるように返事をして、それをまたアキが面白そうに憎たらしい笑みを浮かべて持て囃す。
なぜ俺がこんなにも狼狽えているかというと、シアのアタックがレベルアップしたからだ。
なぜか彼女は机を俺とくっつけた上に、席もピッタリとくっつけて俺の腕に自分の腕を絡ませている。どこかの距離が計れ無さそうな女子高生のようだ。
流石に告白された上に、意識している女の子にそんな風なふるまいをされると俺も意識せざるを得ない。
「お前はいいよなぁ……アレクシアちゃんがいるんだからよ」
「だから俺はシアとは別にまだ」
―ガラガラガラガラッ
俺の言葉の途中で教室の入り口のドアが開かれる。
「おーい、席に着け」
そんな別の視点から見れば平和そのものな時間も先生の登場によって終わりを告げる……と思ったけど、シアは特に変わることなく、そのままくっついたままだtった。
「葛城……いや、まぁいい」
先生が注意してくれると思いきや、なぜか何も言わなかった。
一体どうして……。
神はいないというのか……。
俺は先生の対応に愕然となった。
「よーし、お前たち。久しぶりだな。誰一人欠けることなく、二学期を迎えられて私は嬉しい。そんなお前たちに朗報だ。かねてより来るはずだった留学生がようやく到着した。男ども喜べ、美少女だ」
『うぉおおおおおおおお!!』
先生が俺とアレクシアの事を放置し、俺達を見回しながら嬉しそうに話し始めると、アキが言っていた通り、美少女の留学生がやってきているという話になった。
クラスの男たちは先生の言葉に歓喜の叫びをあげた。
「それじゃあ、入ってきてくれ」
―ガラガラガラガラッ
先生の合図で扉がゆっくりと開く。
俺は興味がないので、外を眺めた。
早く終わらないかな。
俺はそろそろちゃんとダンジョンに潜りたくなってきてダンジョンの事を思い浮かべる。
「自己紹介を」
「はい。私はノエル・キャノンデスよ。よろしくお願いします」
俺の思考の端で、留学生の少女が微妙に癖のあるイントネーションの日本語で流暢に自己紹介をした。
え?待てよ、この声は……。
俺は聞き覚えのある声に、思わず外を眺めていた顔をその少女の方に向けた。
聖女!?
そう、そこには聖女の顔写真そのままの女の子が立っていた。出会った時はガリガリでやつれきっていた彼女だったけど、今は完全に回復しているらしく、写真そのままだ。
そして、俺が彼女を見た瞬間、彼女もまたこちらを見てお互いの視線がぶつかり合う。
「あぁあああああああああ!!」
その瞬間、ノエルが俺を指さして驚愕の声を上げた。
げっ……まさか……。
「私の勇者様、見つけたですよ!!こんな所で会えるなんて、やっぱり私たちは結ばれる運命なのですよ!!」
そう言って俺の方に駆け寄ってくる。
「ん」
しかし、ノエルは俺に近寄ることはできなかった。
なぜならシアが俺とノエルの間に立ちはだかったからだ。
「誰デスよ?」
進路を遮られたノエルは、不満げに尋ねる。
「葛城アレクシア。ふー君の嫁。夫は私が守る」
シアがいつも通り端的に答えた。
うぉーい!!いつから嫁になったんだ!?
俺まだ返事してないよな!?
そしてそれはどう見てもノエルへの宣戦布告じゃないか!!
おやめろください!!
「何を言ってるデスか!!私と勇者様は結ばれる運命なんデスよ!!熱烈なキスも交わしたんデスから!!」
嫁を名乗るシアに威嚇する犬のように吠えるノエル。
『ぐぬぬっ。許すまじ!!』
『なんであいつばかり!!』
ノエルの言葉で周りから指すような視線が俺に襲い掛かる。
「私もした。だから負けない」
シアも負けじとその程よい大きさの胸を張って主張する。そのせいで俺への視線に纏わりつく殺気が増した気がする。
ホントに勘弁してください!!
どっちも俺の意志とは関係ないところで起こったことなんだ!!
俺は視線に言い訳しながらも俺の前でにらみ合う二人を見ると、二人の間にはバチバチと火花が散っているのが幻視出来た。
これから俺の高校生活はどうなってしまうんだ……。
俺は二人と、周りからの視線によって、これから始まる二学期がとても不安になるのであった。
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