第313話 発見
ブラン城からの帰還後、ダンジョン内での調査を行って睡眠をとった後、次のダンジョンに転移直後にも調査を行った。
「はい、これまで」
「お疲れ様でした」
調査の間のお姫様抱っこは無粋、という皆の意見の元、俺はこれから街を散策する際に、一人ずつお姫様抱っこをするという罰ゲームなのか、女の子に触れられて嬉しい賞ゲームなのかわからないことをしなければならない。
どちらにせよ、街の人に注目されて恥ずかしいことは間違い無いと思う。
『最初はグー、じゃんけんぽん!!』
七海達は熾烈な順番争いの結果、天音、シア、零、七海の順番に決まった。
「おい、あいつ四人をとっかえひっかえしてやがるぜ?」
「ホントだ!!さっきからあんなに可愛いジャパニーズだけじゃなくて、ロシア美少女までいやがる」
「くぅうううう羨ましいぜ!!」
「許すまじ!!」
俺達はルーマニアの次のブルガリアで、観光地を巡りながら物珍しさや男達の怨嗟の視線に晒されつつ、任務を遂行するのであった。
「それじゃあ、下ろすからな」
「えぇ〜、もう終わり~!?」
一通りの観光地巡りが終わった後で人の居ない場所に移動して七海を下ろすと、彼女は頬を膨らませて不機嫌そうに抗議してくる。
しかし、零はやって欲しいと言ったものの余りの恥ずかしさにすぐに交代することになったし、天音も十分もしたら満足したようで、すぐにシアに変わったので、実質シアと七海が一番長かったので、かなり長時間だっこしていたはずだ。
「もう全部回ったからな。流石にお姫様抱っこは閉店だ」
「そっか。仕方ないね。まぁ十分堪能したから良しとする!!」
俺が肩をすくめて返事をすると、意外にも七海は素直に引き下がった。
「おう、七海はちゃんと我慢できて偉いな」
「えへへ~、そうでしょ?」
成長を感じた俺は七海を名で繰り回すと、彼女は満更でもなさそうな表情になる。
やっぱり俺の妹は世界一可愛いな。
俺は思わず頬が緩んだ。
「相変わらずのブラコンとシスコンね」
「ホントにね。仲が良いのは良いことだけど、あそこまでベタ惚れなのも珍しいわね」
「確かに。そろそろ七海の方が嫌悪する時期に入りそうなものだけど、そんな気配はこれっぽっちもないわ」
二人が俺達を見ながら何かを囁き合っているようだけど、七海が可愛いので何を言っているのか聞こえなかった。
「さて、今日の回るところは回ったし、ご飯を食べに行きますか」
「そうね。もう六時だし、さっさとご飯を食べに行きましょ。ブルガリアの名物料理、特にグラタン・ムサカっていうヨーグルトを使ったグラタンが気になるわ。有名なお店があるのよね」
七海を満足するまで撫でた後、夕食の提案をすると、天音が食べたい料理を上げた。
どうやらどこかのタイミングで調べていたらしい。
「私グラタン好き~」
「私も好き」
「我も食べてみたいのじゃ~」
「分かった。そこに行ってみるか。零もそれでいいか?」
多数の賛成につき、その料理がある店が最有力候補となるわけだけど、自分の意見を言わなかった零にも一応確認を取る。
「ええ、構わないわ。私もグラタン気になるから」
零も問題ないようだ。
「それじゃあ、天音道案内頼むぞ。ラック」
「ウォンッ」
お店を知っている天音にラックへの指示を頼み、ラックを影から呼び出す。
「えっと、ラック、ここに飛んでもらえるかしら?」
「ウォンッ」
ラックは天音の指定する場所を理解して返事をした。次の瞬間俺達は影に沈み、視界が切り替わる。しかし、そこは街からさらに離れた場所であった。
「え?」
「ここどこ?」
「グラタンは?」
「森のなのじゃ?」
零以外の四人は突然の状況についていけずに辺りをキョロキョロと見回す。
やっぱりこの辺りは年相応だよな。
「街から離れたようね。今の一瞬の間になにかあったのかしら?」
「冷静だな。ラック、どうしたんだ?」
一人零の言葉に俺も気になったので、ラックを呼び出して確認する。
「ウォンッ」
「何!?聖女見つかっただと!?」
「え!?それは本当なのかしら?」
俺と零はラックの言葉に驚愕する。
まだ数日しか経っていないというのにもう見つけるとはラックの優秀さがもはや神がかっていて頭が上がらないな。
「ウォンッ」
「どうやら本当みたいね。観光はここまでね」
「そうみたいだな」
零の言葉にもう一度頷きながら吠えるラック。その様子を見て零はその情報が真実であることを理解して真剣な表情になり、俺も釣られるように気を引き締める。
「ねぇ、お兄ちゃんどうしたの?」
七海達がようやく我に返って俺達に尋ねる。
「ああ。どうやら聖女見つかったらしい。グラタンはお預けだ」
「それは仕方ないわね。終わったら目いっぱい食べるわ」
「残念だけど、そうしてくれ」
俺が聖女の件を話すと天音が残念そうに肩をすくめたので、俺も同じように肩をすくめた。
「聖女とはなんじゃ?」
「それは道すがら説明する。とりあえずこれからは真面目な時間だということだ」
「なんだか分からんが分かったのじゃ!!」
ミラにはいちいち説明している時間が惜しいので転移して状況を確認してから説明することにした。ミラも真剣な雰囲気が伝わったのか素直に頷いてくれた、
「シアも準備はいいか?」
「ん!!」
シアにも確認すると、右手とアホ毛でサムズアップして返事をする彼女。
「それじゃあ、聖女救出作戦開始だ!!」
『了解!!』
全員の準備を確認した後、俺達は聖女の居る場所の近くの人気のない場所へと転移した。
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