第278話 侵略者(第三者視点)

 司令室をより未来化したような一室。


 室内にはリザードマンのような人型生物が多数席に座り、手元のホログラムのようなウィンドウに注目しながら、ホログラムらしいキーボードをカタカタとタイピングしている。


「第三十七番艦アキトメルクより通信」

「繋げ」


 その中の一人が通信を受け取ったため報告を行うと、司令室の一番上の席に座るリザードマンが指示を出す。


「了解しました」


 報告をした部下のリザードマンが再びキーボードをカタカタとキーボードを操作すると、空中の司令室内の全員が見える位置に大きなホログラムような形で一人のリザードマンが映し出された。


『司令、お久しぶりです』

「うむ。久しぶりだな。バルよ。お前たちは確か別銀河の知的生命体の住む星の隷属化作戦を実行していたはずだが、どうしたのだ?」


 お互いが挨拶を交わすと、司令官がバルと呼ばれたリザードマンに尋ねた。


『連絡が遅くなってしまい、申し訳ありません。先程ようやく通信機能が回復しまして、この時間になってしましました。その作戦なんですが、事前調査もしっかり行ったうえで実行しようとした矢先、地球、これは私たちが隷属化しようとした星の名前ですが、その地球からありえない程の高出力のエネルギー砲が放出され、アキトメルク艦が一撃でシールドを破られ、ほとんどの武装が使用不可となるダメージを受けました』

「なんだと!?あの星の技術は調査隊が調べた結果、宇宙を舞台にするにはまだまだ早く、宇宙を攻撃する様な兵器などもってのほかだったはずだ」


 バルの報告を受けて司令官は驚愕を浮かべた。


 調査隊が事前に地球に降り立ち、姿を見つからないようにして調査した結果、とるに足らない様な文明だという結論に至っていたはずだ。


 にもかかわらず、完全に裏をかかれるような形で攻撃で受けたという報告を聞けば驚いても不思議ではない。


『私たちが行った最終調査を行った際も同じ結果だったんですが、力及ばずこのような結果となりました。申し訳ございません。もしかしたらあの地球という星の知的生命体、人間は、地下にそういった施設を建造し、私たちのような宇宙からの来訪者が調査する地上の技術を偽って、油断させて撃退しているのかもしれません』

「いや、いい。今回は仕方あるまい。そこまで調べてなお船が攻撃を受けるなど想像もできんよ。それにしてもカモフラージュか……なるほどな……」


 バルからの報告に司令官は一定の理解を示す。


 調査では流石に地下までは及んでいないので、確かにその可能性はある。彼らの様な宇宙人からの襲撃があった経験があるなら対策を取っていたもおかしくはない。


 ただ、それにしても地上の文明があまりに前時代過ぎるので、カモフラージュにしては行き過ぎなような気がした。しかし、地下に力を隠し持っているという前提で動いた方が何かあった時の対処がしやすいのも事実だ。


「それでどうするつもりだ?」

『今回の案件はで対応した方がいいレベルだと判断しました。地球隷属化作戦の船隊の再編成をお願いできないでしょうか?』

「ふむ。確かにその程度の戦力は必要になりそうか。帰還はいつ頃になりそうだ?」


 司令の質問に対するバルの返事を聞いた司令官は少し俯いて考えるような仕草をとた後再び問い返す。


『思いのほか通信機能の回復に時間がかかりまして、後二日といったところでしょうか』


 地球からここまで、彼らの技術を駆使しても四日程かかる距離。それが残り二日となれば半分の道程が過ぎていることになる。それだけ通信機能の復旧に時間がかかったということだ。


 ただ二日あれば船団に必要な人員と装備の確保はギリギリ間に合う時間だ。


「ほとんど時間がないな。しかしわかった。すぐに手配のために動くとしよう」

『ありがとうございます。作戦の際に取得したデータは全てお送りしますので、お役立てください』


 時間がないためすぐに動くことを約束した司令官にホログラムのバルは頭を下げる。


「うむ。分かった。それでは帰還までくれぐれも気を抜くなよ」

『はっ』


 データの件を了承した司令官にバルが敬礼すると、通信が切れてホログラムが消える。


「さて、すぐに動かねばならないが、その前にデータを見てみるか」


 司令官は送られてきていたデータを開き、バルがホログラムとして映し出されていた場所にスクリーンに映し出されたように当時の映像が再生された。


「まさか……これほどの威力だとは……」


 そこにはちょうど放出されたエネルギーがこちらに飛来してくる様子だった。凄まじいスピードと威力で船に迫り、カメラが破壊されて砂嵐の様な画面が映し出された。


 その余りに一瞬の出来事によくぞ生きて帰ってきたものだと感心すると、同時にその威力に驚愕する。


「あれほどの威力だと最高戦力であるイージス級戦艦でなければ対応できないもしれないな。すぐに打診しよう」


 映像とデータを見終えた司令官はすぐに上層部に通信を行った。

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