第210話 一体いつ終わるんですよ~!?(第三者視点)
「これは……酷いですよ~……」
「まぁね……この辺りは町中のダンジョンがスタンピードを起こして、そのダンジョンはDランクだったんだけど、ダンジョンリバースも起こっていたみたいね。モンスターがCランク級になっていて、探索者達も対処しきれなくて結構被害を出してしまったのよ」
白を基調として深いスリットの入った神官服に身を包む金髪紅眼の少女は、目の前の光景を見るなり、その惨状に悲し気な表情を浮かべた。
彼女の名はノエル。聖女と名高い世界屈指の
ノエルの反応に、スタイル抜群の金髪のロングヘア―をたなびかせる大人の女性が答えた。
彼女は自身の用事を済ませた後、ノエルの事が心配で付き添っている。頼りがいのある雰囲気のある女性という印象にたがわず、面倒見がいい性格だった。
彼女たちが来ているのは、臨時の診療施設。
スタンピードで多くの被害を出したため、けが人を病院に収容しきれなくなった。そのため、そこから溢れた人たちを収容している場所だ。
大きな体育館のような場所に百人を超える沢山の怪我人が寝かされている。
重篤な患者は病院に、命の危険が低い人たちはこっちに移動させられた。
しかし、命の危険が低いと言っても、手足を失ったり、目を深く傷つけられて失明したりなど、かなり酷い怪我の人たちもこちらに集められていて、施設内は悲壮感に溢れていた。
「ジェシカ、早速やるですよ?」
「そうね。ひとまずここの責任者に挨拶しましょ」
「了解ですよ~」
惨状を見ていられなくなったノエルは、金髪の女性に視線を向けて問う。ジェシカは勝手にやるわけにはいかないと、まずは二人で責任者を探す。
「すみません」
「はいなんでしょうか?」
ジェシカが歩いていた一人の看護師に声を掛ける。
「依頼を受けてきたんですけど、ここの責任者はどこに居ますか?」
「ボスでしたら、あそこで治療している先生ですよ」
「分かりました。ありがとうございます」
看護師が丁寧に教えてくれたので、二人は頭を軽く下げて、責任者の場所へと向かった。
「くそっ。薬が足りん!!」
責任者と呼ばれた人物の所へ行くと、男は治療しながら悪態をついていた。これだけの被害者が出れば薬などあっという間に切れてしまうのも当然だろう。
「すみません」
「なんだ!!私は忙しいんだ!!」
ジェシカがその男に話しかけると、怒りを当たり散らすようにジェシカに怒鳴る男。
「ちょっと落ち着くですよ~、カーム」
「ほへぇ~」
ジェシカに怒鳴る男に、その行動を見かねたノエルが魔法を唱えると、その男は変な声を出して、毒気を抜かれたような顔になった。
「なんだか急に気持ちが穏やかになったな。いやぁすまんすまん。ちょっと気が立っていた。それで君たちは何の用だ?」
暫く呆けていた男だったが、我に返ってさっきとは打って変わってにこやかな笑顔を浮かべて用件を尋ねる。
「けが人の治療の依頼を受けてきたんですよ。この子、優秀な
「なんだ。そういうことか。本当に助かる。薬がほとんど切れてしまってな。重篤な患者から治していってもらおう。いくつかの区画に分けられていると思うが、その区画のパーテーションに数字が張ってあるのが分かるか?」
ジェシカが来た目的を話すと、男は頷いて説明し始める。
「分かるですよ~」
「その若い番号の患者から治療していってくれ」
「分かったですよ~」
男の指示を受けて自分のやることを理解したノエルは一番と書かれた札のあるパーテーションで囲まれている区画に移動した。
「すみません、こちらの患者を治療するように言われたんですけど?」
「え、あ、そうなんですか?」
「はい、あの責任者の方に指示を受けました」
「そうですか、分かりました。案内しますので順番に治療してください」
「分かったですよ~」
誰から治療したらいいか分からないのでまずは看護に事情を放し、順番に案内してくれることになった。
「まずはこの方をお願いします」
最初に案内されたのは、全身に酷いやけどを負い、足も片方途中から途切れていて、息も絶え絶えと言った様子の男がベッドとも呼べないシーツの上に寝かされていた。
これで重篤な患者に入れない所を見ると、病院の惨状はここの比ではないことが予想される。
「分かったですよぉ!!~~パーフェクトヒール!!キレイサッパリなくなるですよぉ~」
指示を受けたノエルは患者の前で呪文を唱え、治癒魔法をかけた。
「はっ?」
すると、火傷どころか欠損まで治ってしまった。止血や命に別条がない状態にするだけだと思っていた看護師は、目の前の光景に愕然として声を漏らす。
「あなたは一体……」
「これでも聖女なんですよ~?」
呆然として問いかける看護師にドヤ顔で自慢げに胸を張るノエル。
「そんなバカな……聖女がここにいるわけが……いや、目の前の光景こそ事実でしょう。分かりました。皆を救ってください」
「分かったですよ~」
それからノエルはひたすらに回復魔法をかけてまわった。
「一体いつ終わるんですよ~!?」
しかし、かけてもかけても後から後から患者がやってくる状態に流石のノエルも無きが入った。
話を聞きつけた病院関係者が患者を運んできてはノエルに治療させていたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます